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以下のものを読んだ後だと、より一層ゆっくりできると思います。 具体的には、部屋の配置とおりんのゆっくりプレイスが良く理解できるかも。 B級ホラーとひと夏の恋 別にどちらも内容に大きく関係しないので、読まなくても平気です。たぶん。 「さて……どうしたものかな」 「どうしたんだい? おにーさん」 「今度はね、普通のれいむとかまりさにしようかと思ってるんだ」 「ゆゆ! じゃあおりんのゆっくりプレイスはつかわないんだね!!!」 「…………」 「……つかわない、よね?」 「残念だったな。今回もこの部屋使うぞ」 「ゆがーん……ゆっぐりでぎないよぉ……」 ◇ ◇ ◇ 「さあ、こんかいみんなに集まってもらったのは、大事な話があるからです」 「むきゅ? パーティーかなにかかしら?」 「う~☆ パーティーはゆっくりできるんだどぉ~♪」 何でこんな時期にパーティーするんだよ。 一年のうちパーティーする機会だなんて俺の誕生日ぐらいだろ。 「残念、パーティーじゃないんだ。誰か正解することができたら、みんなにゆっくりとしたご褒美あげちゃうぞ!」 「ひゅい!? にとりにあたらしいすいそうさんをくれるの!?」 「くろまく~! あたらしいれいとうこ~!」 「あたいったらさいきょーね!」 「こぼね! こぼねこぼーね! こーぼねー!!!」 「……げーむき」 「じゃあえーりんも姫様と同じものをおねがいします!」 「――――」 「―――」 「――」 「―」 その後も騒がしい喧噪はしばらく続いた。 というかお前ら自分の欲しいもの言ってるだけだろ。俺の財政状況は無視か!? あれだな、ご褒美と言ったのがまずかったらしい。もう全員ゆっくりとしたご褒美のことしか考えていない。 あっ、でもれみりゃが欲しいものは『ごーじゃすなケーキ』だそうだ。それくらいなら覚えていたら駅前のコンビニで買っとこ。 「……さて、みんな言い終わったかな?」 「ゆゆぅ……もうだめだよおにーさん。おもいつかないよ。ゆっくりしたものはさっきのものだけでいいよ……」 なにが『だけ』だ。 全部買ったら間違いなく家計が火の車になる。むしろ出血多量で入院コースか? とりあえず赤くなるのには違いあるまい。 「それじゃあ、みんなに大事なお話をするぞ! それはな―――」 「それは―――?」 「なんと、みんなの中から何匹かがゆっくりできなくなります!!!」 「「「「「ゆうぇえぇぇぇ!?!」」」」」 ◇ ◇ ◇ 次の休日。 「ゆゆっ! やめてね! れいむをはなしてね!」 「まりさをはなすんだぜ! ゆっくりできないんだぜ!」 俺は準備が終わった後、山で適当に二匹を捕まえた。 他のゆっくりと違って、わりと見つけやすいのが便利だよな。 「いいかい? 今日はね、れいむとまりさにゆっくりとしたお話を持ってきたんだ」 「ゆゆゆっ!? ゆっくりできるの!?」 「れいむ、だまされちゃだめなんだぜ! にんげんさんは『じゃあく』で『やばん』ないきものなんだぜ!」 おお、このまりさは意外とましだな。 人間に近づこうとは思わないのは、生きていく上で正解だ。 まあ、こうして俺に捕まったら意味がないわけだけれど。 「なに、そんなにむずかしいことじゃないよ。ゆっくりとしたレースにかてば、あまあまをあげるんだ」 「ゆっ! まりさ、あまあまだよ! ゆっくりさんかしようよ!!!」 「だめだぜ! きっとまけたらゆっくりできなくなるんだぜ!!」 「あはは、そんなことないよ。負けたところでおれは何もしない。本当さ」 「ほら、なにもしないって! ゆっくりできるよ!!!」 「ゆゆーん……」 「まりさはむれでいちばんかりがうまいゆっくりなんだよ! れいむはいちばんうつくしいゆっくり! ふたりならむてきだよ!!!」 「れいむ……でも……」 お、迷ってる迷ってる。もうひと押しだな。 「大丈夫。レース中は死ぬことはない、簡単な障害物競走さ。それに相手は我が家にいるゆっくりとかだから、勝てると思うよ?」 「……ほんとうに、しなないんだぜ?」 「ああ、レース中には絶対に死なないよ。もし死んだら、生き残った方に好きなだけあまあまをあげよう」 その一言で、まりさは折れた。 ◇ ◇ ◇ さて、今回の虐待の内容を説明しよう! ゆっくりレース会場はおりんのゆっくりプレイス、もとい観察系虐待部屋! 今この部屋は襖が外されているため、四方のうち一か所だけ壁がない部屋をイメージしてほしい。 中央にはベニヤ板で作った壁が一つだけ、入口から延びている。 つまり、入口の右から入って左から出るだけの、凹型のコースというわけだ。 ゆっくりレースが開催されるたびに、俺はこのレースに仕掛けを施す。 そして、先にゴールした方が優勝だ! 「―――と、いうのはお前たちに説明しても分かんないよな。こっちから入って、ぐるっと回ってここから出てこれたら勝ちだ」 「「ゆっくりりかいしたよ!!!」」 「俺が『よーい、ドン!』って言ったらスタートだ。わかるか?」 「「とうぜんだよ!!!」」 うんうん、素直なゆっくりは大好きだぞ。 さて、我が家のゆっくりはどういう反応だろう? 「…………」 「おや? にとり、ゆっくりしてないな?」 「……ゆっくりできないよ」 「そんなこと言うなって。もし勝てたら、新しい水槽をあげるんだぞ?」 「…………」 にとりが元気ないのも無理はない。 今ここら辺全体は、一晩中かけたエアコンの『ドライ』のせいで、すごい乾燥した空気になっている。 おそらく今この瞬間も、いつ乾ききってしまうのか心配でゆっくりできないに違いない。 ちなみに我が家のゆっくりは、選手以外は観察部屋か二階にいるよう命令してある。 「というわけで、こっちの一番手はにとりからだ。そうそう、お前たちは片方でも先にゴールできたら勝ちだからな」 「ゆっゆっゆ! おじさんはまりさたちをあまくみてるね?」 「そこのにとりはすごくゆっくりしているけれど、れいむたちはもっとゆっくりしているんだよ?」 「「ゆっくりかったもどうぜんだね!!!」」 うん、まあ、間違っちゃいない。 今回は最初から、お前たちが勝つようにセッティングするんだからな! 「それじゃあ第一レース。よーい、ドン!」 ◇ ◇ ◇ 見えきった勝負だ。結論から言おう。 にとりは負けた。 乾燥しかけた体だとうまく動けないとは知っていたが、まさか魔理沙たちがゴールするまでに半分も進めないとは思ってもいなかった。 「ゆゆ~♪ ゆっくりかったよ! やくそくどおりあまあまをちょうだいね!!」 「ゆゆーん♪ まりさはやっぱりゆっくりしてるよ♪」 まりさたちはもう有頂天である。 実際にレースに勝てただけじゃないだろう、飼いゆっくり―――つまり、自分たちよりもゆっくりしているゆっくりに勝ったのだ。 まりさたちだって、飼いゆっくりの境遇を知らないほど馬鹿じゃない。 自分より上のものに勝つということは、とてもゆっくりできることなのだ。 「…………」 反対ににとりは悔しがっていた。 ただ無言で涙を流していた。 にとりにしてみれば、自分より不細工でゆっくりしていないゆっくりに負けたのだ。 それも、にとりが望まない勝負によって。明らかに負けるとわかってても、参加しなくちゃいけなくて。 今この場で、そのことをれいむとまりさに言うこともできなくて。 ここでにとりは、ただの道化だった。 「……おい、にとり」 ここで俺は、にとりにだけ聞こえるように言葉を掛ける。 だが、にとりは俺を見ようとすらしない。逆に、そっぽを向かれてしまった。 ……これはちょっと虐めすぎたかな。 「あとで胡瓜を買ってやるから、機嫌を直してくれ。な?」 「―――リ」 「ん?」 「3キューリで、ゆっくりゆるしてあげるの」 「ああ、わかった。三本だな」 よかった、それなら100円あれば十分だ。 何で金を気にするかって? 若手社員に金が余ってるわけないだろ。虐待も経済化の時代なんだよ! 「ゆっ! おじさん!」 「ん? どうしたまりさ?」 「やくそくどおり、あまあまちょうだいね!!!」 「ああ、そうだな、ゆっくり待ってろ」 そして俺はまりさたちにも見えるよう、近くのちゃぶ台の上のお皿に、二粒だけゆっくりフードを置いた。 「ほら、まずはこれだけだ」 「ゆっ! これだけじゃなりないよ!! もっともってきてね!!!」 「そうだよ! これだとれいむはゆっくりできないよ!」 「まあ待て、これからお前たちが勝つたびに、このゆっくりフードは2倍になる……って言っても解らんか。 いいか! まりさたちは勝てば勝つほど、もらえるあまあまが一気にふえるんだ!!!」 「「ゆっくりりかいしたよ!!!」」 うん、単純な言葉って便利だよね。 「んじゃあ、次はちるのだ」 「あたいってばゆっくりさいきょーね!!!」 ◇ ◇ ◇ 「ちゃんといわれたとおりだよ! はいったあと、はやくでてくればさいきょーだよ!!」 「だからって、入口から入ってすぐ出てきたらルール違反だろ……」 実は最初からちるのにはこうなるように、わざと聞き間違える説明をしたのだが。 「ゆっふっふ、ちるのはやっぱり⑨だね!」 「『るーる』さんもりかいできないなんてね! おお、おろかおろか」 「ちるの、まるきゅーじゃないもん! てんさいだもん!」 「はいはい、それじゃあちるのはそこにいな。―――あとでこっそりアイス買ってやるから」 「ゆっ……ゆっくりりかいしたよ!!!」 どうでもいいけど、ちるのってバカと言うより短絡思考なだけだよな。 「んじゃ、ゆっくりフードをほいほいっと」 「ゆゆぅ? あんまりふえてないよ!」 「大丈夫だ、次からがすごいぞ」 次のに勝てば八個になるのだ。 慎ましいゆっくりなら十分な数だろう。そんなゆっくり、野生では見たことないが。 「それじゃあ、次のれてぃに挑戦だ!」 その前にエアコンを暖房にしないとな。……うわ、あっちぃ! 夏に暑さ我慢大会する奴の気持ち、俺にはわからんよ。 ◇ ◇ ◇ 「く~ろ~ま~く~……」 「ゆゆっ! れてぃ、ゆっくりしてね!」 正直、れてぃは善戦した。 最初は中のバニラアイスも動くにはいい塩梅だったのだが、エアコンの下にきて暖房をもろに浴びた時、れてぃは動けなくなったのだ。 そしてすぐに暖房を切ったのだが、これ以上ひどくならなくとも回復するわけがなかった。 俺はレースが終わった後に待機していたちるのへ冷やすよう命令して、今に至る。 れてぃはまりさたちに悔しがる余裕もないらしい。 割と本当にやばかった。 「……動けるようになったな? とりあえず冷凍庫に入ってろ。後で様子を見に行く」 「さて、まりさたちにはあまあまをあげよう。ほれほれ」 「ゆゆっ! ……ゆ? これだとまりさはゆっくりできるけれど、れいむはゆっくりできないよ!」 「ほんとうだよ! れいむのぶんしかないよ!」 お前たち、よくその会話でけんかしないな。どっちも自分の分が優先かよ。 「大丈夫。次もまりさたちが勝てば、これが倍……つまり、二匹分もらえるんだぞ?」 「ゆゆゆっ! じゃあさっそくちょうせんするよ!」 「ゆふん! もはやかちはきまったもどーぜんだね!!!」 ああ、決まってるとも。 今のうちに良い思いをするがいいさ。 ◇ ◇ ◇ その後も出来レースは続き、まりさたちは勝ちを重ねていった。 れてぃの次に出てきたゆゆこには驚いたようだが、俺が天井にゴムで吊るしたお菓子を吸い取ろうと頑張っている間にゴールした。 ゆゆこには今度、腹二分目まで食べさせてあげる約束をした。ちなみに普段は腹一分目も食べさせていない。 その次のてるよふは楽勝だったでろう。全く動かなかったのだから。 でも、なぜか三百円を要求された。今度ゲーセンでシューティングをやるらしい。 次はえーりんである。普通の仕掛けであれば、まりさたちに負けることはなかったはずだ。 だが、途中にてるよふを置いたら動かなくなった。えーりんは何もいらないらしい。いいやつ。 続いてもこたんを走らせた。すると途中のてるよふを攻撃しようとして、えーりんと喧嘩を始める。いつもの光景だ。 欲しいものはタバコとかほざいていたため、棒付きキャンディを買うことにした さて、次はえーきさまだ。今は走らせてるのとは別の野生のゆっくりの足を焼いて置いといた。 まりさたちは『ゆっくりできないね!』と言いながら去って行ったが、えーきさまは延々と人間に近づかないように説教し続けた。 ちなみに、欲しいものはシークレットブーツ。不可能だからあきらめてもらった。 じゃじゃーん! 次はおりんである。おりんはゾンビゆっくり五匹との参加である。 そのときれいむが『かずがおおいなんてはんそくだよ』なんて言っていた。ゾンビは遅いからむしろハンデだよ。 途中に空気しか入ってないビニールプールを、道幅いっぱいになるよう置いておく。高く跳ねれないゾンビは全滅し、おりんは泣いた。 要求してきたのは、次こそこの部屋を使わないでとのこと。……気が向いたらな。 最後のいくさんは空気を読んだ。 まりさたちとつかず離れずの接戦の末、なんと僅差でれいむが勝った。最後の大ジャンプが功を奏したらしい。 まりさも『ゆっくりとしたきょうてきだったぜ……』などと言い、熱い握手(?)を交わしていた。 ちなみに欲しいのはダンシングレボリューション。買えないといったら、ならなにもいりませんと返してくれた。 キャーイクサーン!!! 素敵すぎるぜいくさん!!! さて、みんなから聞いた欲しい物をメモ帳にまとめたのだが、これなら何とかなりそうだ。 飼い主って大変だね! 「ゆっひょぉぉぉ……」 「ゆぅぅぅ……」 まりさとれいむは、ちゃぶ台の上を眺めて感嘆の息を漏らしていた。 ちゃぶ台の上はゆっくりフードで山ができている。もちろん、ピラミッド状の、とんがった山だ。 ここまで俺がちゃんと置いていれば、1024個である。 もちろん途中から数えるものめんどくさくなった。 だから適当に箱から出して山にしているだけなのだが、それでもすごさだけは伝わっているはずだ。 「ゆっくり……これだけあれば、いっしょうゆっくりできる……」 「ちがうよまりさ……まごまでのこしていけるよ……」 ちなみに、そこまで量はない。 消費期限を考えなければ、ちびちびと我慢しながら食べれば一生持つかもしれないが、強欲なゆっくりであれば三日で食べきるはずだ。 付け加えるならば、この量ならゆゆこの毎日の食事である。これで腹一分目もいかないって…… 「まりさ……正直俺は、お前を見くびっていたようだ。我が家にこれ以上のあまあまは、ほとんど残っていない。だから、次で最後にする!」 もちろん嘘である。 本当はゆゆこがいるため、問屋から卸してもらっているほどだ。 「ゆっ! いさぎよいね! でもまりさはまけないよ!!!」 「わかった、挑戦するんだな。……ちなみに次に勝った時、このあまあまの山をもう一つつける!」 「「ゆゆゆっ!?」」 要するに二倍である、最初と言っていることは変わらないのに驚くゆっくりたち。 「……ゆっ! 大丈夫だよ! たとえちぇんでも、けーねでも、……いまなられみりゃやふらんにも勝てるよ!!!」 「よし、言おう。次の対戦者は……この俺だ!」 「「……ゆ?」」 れいむとまりさは目に見えて呆然としていた。 相手が強すぎるから? いいや、逆である。運が悪い相手を憐れんで、だ。 ゆっくりは基本的に顔と帽子の大きさで相手の強さを判断しているため、にんげんを軽視する傾向にある。 最初は人間を警戒していたまりさも、先ほどから美ゆっくりに勝ち続けている今では警戒心が薄い。 むしろ『いまならにんげんさんにだって……かてる!』と思っていても、なんの不思議ではないのだ。 「……にんげんさん、こうかいしないね?」 「ああ、大丈夫だ……負けた時の覚悟は、できている」 それどころか、俺は勝った時のことも考えている。むしろそっちがメインで。 「それじゃあ、合図はいくさんに頼もう!」 「ゆっくりよーい……ドンですわ!!!」 テクテクテク、テクテクテク、テクテクテク。 はい、ゴール。 「「……なんでぇぇぇ!?!」」 いや、当然だろ。 ◇ ◇ ◇ 「さて、れいむとまりさ。お前たちは敗者になったわけだ。理解してるか?」 「「ゆっくりりかいしたよ……」」 二匹はすっかり意気消沈していた。 まあ、最後が圧倒的過ぎたからな。 「というわけで、後はお前たちの隙にするといい。もう自由にどこかに行ってもいいぞ」 「「ゆゆゆ!?」」 「に……にんげんさん、あのあままのおやまさんは?」 「ん? ああ、お前たちのものだ」 「……まりさたちになにもしないの?」 「やだな。そう言う約束だろ? 忘れちゃ困るな」 「「ゆゆゆゆゆ!?!」」 一気に顔に輝きを取り戻していくまりさたち。 まるで夜中に部屋の明かりを点けたような変わり具合だ。 「「ゆわーい!! ゆわーい!!」」 「それじゃあ、後は頑張って逃げてくれたまえ」 「……ゆ?」 気がつけば二匹の周りは、 いくさんが、 おりんが、 えーきさまが、 もこたんが、 ゆゆこが、 れてぃが、 ちるのが、 そしてにとりが、隙間なく囲んでいる。 「まあ、自分たちがバカにしたんだから俺は関係ないということで。みんな、絶対に殺すんじゃないぞ?」 「「「「「ゆっくりりかいしたよ!!!」」」」」 「「ゆんぎゃぁぁぁ!?!」」 そして二匹は連れ去られていった……のだが、なぜかゆゆこだけが戻ってきた。 「ハーフーーー!!! こぼねっ♪」 嬉しそうににゆっくりフードの山を吸いこんだゆゆこ。 それがれいむとまりさの物だったのは、一夜にも満たない、儚すぎる時間だった。 「まあ、せっかくあいつらにあげたのに食べてもらえないのはかわいそうだからな…… おいゆゆこ。今日の分はいつも通りやるから、それとあわせて腹二分目の約束は帳消しな?」 「こーぼねー♪」 「う~♪ こんかいはいじわるされないし、れみりゃのひとりがちだどぉ~☆」 「ああ、お前はここの片づけな」 「うぅー!? ひどいどぉー! おうぼうだどぉー!!」 「片付けなければ明日のぷっでぃ~んは抜きだ」 「うわぁぁぁ!?!」 安心しろ、お前にはすでに『ごーじゃすなケーキ』を買ってある。 明日のおやつの時間には、それを出してやろう。 もちろん目の前で俺が食べるのだが。 ◇ ◇ ◇ れいむとまりさの扱いは、ひどいものだった。 「かっぱっぱー♪ もうちょっとみぎにいどうさせて」 「ゆっ! こうだね!」 「およよ、あばれないでください」 最初は、にとりが新しく作ったパチンコの実験台にされた。 いしさんが当たってゆっくりできなかった。 「あたいったらさいきょうね! ……へくちっ!!!」 「…………」 「…………」 「では、もこたんにもっていきますね」 次に、ちるのに何回か氷漬けにさせられた。 寒くてゆっくりできなかった。 「くろまく~♪」 「じゃじゃ……さむっ! れてぃ、ゆっくりたべちゃだめだよ?」 「くろまくー……」 れてぃの中は暖かかったけれど、ゆっくりと融かされた。 怖くてゆっくりできなかった。 「ハフッ! ハフッ!」 「ゆんぎゃぁぁぁ!!!」 「れいむのかわいいほっぺがぁぁぁ!?!」 ゆゆこのおやつにほっぺを食べられた。 喰われてゆっくりできなかった。 「じゃあ、次はこの『す』さんを入れてみましょうか。大丈夫、ゆっくりできるかもしれないわよ?」 「……ユッグリデギナイヨ」 「あら? ゾンビゆっくりみたいな話し方になったわね?」 えーりんには変なものを注射された。 くすりさんはゆっくりできなかった。 「もっこたん~♪ もこたんの『すみびやき』だよ~♪」 「あじゅいぃぃぃ!!!」 「もうやべでぇぇぇ!!!」 もこたんには『すみびやき』にされた。 暑くてゆっくりできなかった。 「―――いいですか? ゆっくりしたことばにつられるのはしかたありません。ですが、きめたのはあなたたちなのです。ですから―――」 えーきさまにはお説教された。 お説教はゆっくりできなかった。 まりさたちを捉まえてたゆっくりも、ゆっくりできていなかった。 「ん~~~……ふぃーばー!!!」 「ゆびびびびび!!!」 「ぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ!!!」 いくさんにはふぃーばーされた。 ふぃーばーはゆっくりできなかった。 そして、最後にたどり着いたのは――― ◇ ◇ ◇ 「……さて、お前たち? 俺のところに回されたということは、どういうことだか解るな?」 「…………」 「…………」 ほとんど目が死んでるな。 まるで『しんだほうがゆっくりできるよ……』とでも言ってそうだ。 いや、目は口ほどに物を語るという。 ならば、そう考えて間違いないだろう。 「さて、お前たちも今日で最後だ……最後で最大の苦痛を与えてやる」 「「…………」」 れいむとまりさは、何も答えない。 体は傷だらけで餡子もボロボロだろうが、どこも欠損はなくて生きているのだ。 答えれないわけじゃない。答えたくない、自分で言って理解したくないのだろう。 「じゃじゃーん! さいごはおりんのでばんだね!」 どこからか、おりんがやってきた。 後ろにはゾンビゆっくりを連れている。 「れいむとまりさは、しんだあともおりんのゾンビゆっくりになるんだよ! ゆっくりしていってね!!!」 「ああ、お前の出番ないから」 「どぼじでそんなごどいうのぉぉぉ!?!」 何か勘違いしていたのか、おりんは突然泣き出した。 いや、だってお前、この前みんなと一緒になってまりさたちを虐めてたんじゃないのか? それで充分だろ。 「とりあえず、お前たちは元々いた群れの近くに帰してやる」 「「……ゆゆ?」」 「おりんはゆっぐりでぎないぃぃぃ!!!」 「はいはい、おりんは黙ってろ。……もう一度言おう、群れの近くに帰してやる。そして、静かに群れと一緒に暮らすんだな。」 おお、なんか信じられないという顔しているぞ。 まあいいか。おれは返答なんて求めていない。さっき言ったことを実行するだけだ。 そしてれいむとまりさは、本当に群れの近くまで返されたのだった。 ◇ ◇ ◇ 「むきゅ、ほんとうによかったの? あのれいむたちをにがして」 「ん? ぱちゅりぃは不満なのか?」 「当然よ! もしあのれいむたちが、ほかのにんげんさんになにかしゃべったら……」 「ははは、何の問題もないよ。―――少なくとも俺は。 むしろ俺はゆっくりした人と言われ、ゆっくりしてないのはここのゆっくりたちだろうと言われるね」 「……ぱちゅりぃはどうなってもしらないわよ」 「ああ、大丈夫。どちらにしろあのゆっくりたちは、もうすぐ最高にゆっくりしないまま死ぬだろうから」 「むぎゅー! どこにそんなほしょうがあるのよ!!」 「……いいか、よく覚えておけ。群れのことで―――社会性のことで、人間以上に詳しい生物なんていないんだよ」 野生動物は一度大きな怪我を負うと、生きていくことはできない。 それはゆっくりも同じこと。 弱ったゆっくりが生きていけるわけがない。 群れに戻ったれいむとまりさは、満足に動けなかった。 そのため満足な狩もできず、群れの中でも白い目で見られた。 ゆっくりできたはずのみためだって、虐待のせいで火傷だらけで、髪もかざりもボロボロ。 群れのゆっくりはこっちを見るときに目をそらす。 そんなゆっくりが復讐しようと言っても、誰も付いてくるわけがない。 最後は邪魔者扱いされて死んでしまった。 群れの仲間に殺されてしまった。 それを咎める者は誰もいなかった。 これがれいむとまりさ、最後のゆっくり生における、たった二日間の全容である。 あとがき チルノの裏の会話で普通のゆっくりの虐待を望んでいた人がいたので、 ゆっくり徹夜で書いてみました。 予想と違ってゆっくりできなければごめんなさい。 前に書いたもの B級ホラーとひと夏の恋 ゆっくりできないおみずさん このSSに感想をつける
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「ゆっくり避妊ありす」 市場で買い物を済ませ、荷物を持って家へと続く道をひた走る。 というのも、家には飼っているゆっくりれいむとゆっくりまりさが待っているのだ。 最初は「ここはれいむのおうちだよ」などと神経を逆撫でする言動にずいぶん苛立ったものだが、飴と鞭で うまくしつけてやれば、何とか飼えないこともない。 程度を加減して苛めれば、いい感じにストレス発散になるから、なかなか有益な生物だ。 家までもう少し、というところで僕はあるものを見つけた。 「ゆ!!ゆっくりしていってね!!」 僕を目にするや否や、本能に従ってお決まりの台詞を吐く。 そいつは、いわゆる“ゆっくりありす”だった。 金髪にヘアバンドが目印で、どちらかというと珍しい部類のゆっくりだ。 そいつはダンボールの中に入れられていて、うまくはまっていて自力では出ることができないらしい。 そして、そのダンボールには『拾ってください』と筆文字で書いてある。 どうやらこいつ、誰かに飼われていたが捨てられたらしいな。 「おにいさん!!ありすをゆっくりたすけてね!!そしたらとくべつにゆっくりしてあげてもいいよ!!」 この癇に障る喋り方も、きっと捨てられた原因のひとつだろう。 確かに、普通の人間の感覚ならこの言動はイラっとくる。人によっては殺意すら覚えるだろう。 だが、僕は違う。僕にとってゆっくりに対する殺意など存在しない。そこにあるのは、ただゆっくりを虐待 して得られる恍惚感だ。 「あぁわかった、助けてあげるよ」 「ゆ!!ありがとうね!!とかいはのありすが、とくべつにゆっくりしてあげるよ!!」 都会派気取りの台詞を聞き流し、僕は家に向かうのは止めて別の道へと進む。 こいつを飼ってやることに、異存はない。しかし、このまま連れて帰ることはできない。 なぜなら、ゆっくりありすは発情すると他のことには目もくれず、他のゆっくりと交尾を始めるからだ。 交尾って言い方は生易しいな。いわゆるレイプである。 レイプされたゆっくりは、成長が不十分であれば当然蔓を生やした後朽ち果ててしまう。 僕のかわいいれいむやまりさが、こんなクズゆっくりに殺されてたまるか。 ということで、僕は永遠亭の女医にゆっくりありすの不妊治療…ではなく避妊治療をお願いすることにした のだ。 治療はたったの5分で済んだ。 ありすの両頬に親指をねじ込んで、ぐいぐいこね回すだけ。 皮を突き破り、餡子に至った指の振動に、ありすは悲鳴を上げていた。 「ゆぎゃあああああああ!!!いだい、いだいよおおおぼぼぼぼぼぼぼ!!!」 その後、傷に何か特別な薬を塗ると、傷はたちまち塞がってしまい、 「ゆううううう、すっきりー!」 と、まるで交尾の直後のように清々しい表情を見せたゆっくりありす。 僕は受付のウサギに治療費を支払うと、ありすを抱えて今度こそ帰路についた。 「ゆ!!おにいさんのおうちで、ゆっくりしてあげるね!!ゆっくりかんしゃしてね!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり(笑)」 適当に相槌を打つ。ゆっくりを飼うコツ、それはゆっくりの発言を真に受けず、ゆっくり受け流すことだ。 そうすることで、無駄なストレスを溜めずにゆっくりたちと長きに渡って付き合い、虐待することができる。 最近それができないやつが多くて困るよ。カルシウム足りないんじゃないのか?って思う。 いつもより45分遅れて、自宅に到着した。 玄関の扉を開けると、その音を聞いてかれいむとまりさがピョンピョン跳ねてくる。 「ゆゆっ!!おかえりなさい!!ゆっくりまってたよ!!」 「おなかすいたよ!!ゆっくりごはんもってきてね!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり(笑)」 餌をねだって僕を見上げる二匹……視界に入るのは、僕が抱えているもう一匹のゆっくりだ。 「ゆゆっ!?そのこはだあれ?ゆっくりできるこ?」 「ゆっくりできないなら、まりさたちのおうちからでていってね!!」 顔が見えていないから、こいつが誰なのかわかっていないらしい。 僕はありすの顔が二匹に見えるように、向きを変えてやった。 その瞬間、二匹の顔色が変わる。 「ゆぎゅ!?ありす!?」 「ゆっくりでてってね!!ありすとはゆっくりできないよ!!」 ある程度成長してから捕まえた二匹だから、ゆっくりありすの危険性はよく知っているらしい。 同じゆっくりであるにも関わらず『ゆっくりできない』と拒否し始めた。 「大丈夫大丈夫、こいつとすっきりしても、死なないから」 「ゆ!?」 ありすと交尾をしたら、よほど成長したゆっくりでないかぎり朽ち果てて死んでしまう。 それが他種のゆっくりの常識だ。 だが、このありすは避妊治療を施したから、交尾をしても赤ちゃんはうまれないし、朽ちることもない。 僕はそう説明をしたのだが、ゆっくりありすがどれだけ危険か今までの人生(ゆっくり生)で学んできた二 匹は、なかなかそれを信じようとしない。 「だめだよ、ありすとはゆっくりできないよ!!ありすとゆっくりするとしんじゃうんだよ!!」 「そんなことないよ!!とかいはのありすが、とくべつにゆっくりさせてあげるね!!」 僕の腕から飛び降りたありすは、さっそくゆっくりれいむに引っ付く。 頬を摺り寄せるのは、交尾の始まりの合図だ。 振動を与えられて、頬を赤らめるれいむだが、生存本能のほうがまだ勝っているらしくありすを拒絶する。 「ゆ゛!!ゆっくりはなれてね!!ゆっくりどっかいってね!!」 「れいむうううううっぅぅぅぅ!!そんなおこったところもかわいいいい゛い゛い゛い゛!!!!」 一度スイッチの入ったありすは、どのゆっくりにも止められない。 れいむに圧し掛かって、交尾時特有の粘液を纏い、さらにはばら撒き始める。 おいおい、ここを掃除するの誰だと思ってるんだよ… 本来ならここでありすをブチまけている所だが、避妊の成果を見たいので放っておく。 「ゆゆっゆゆゆゆゆっゆゆゆゆ、やめでよお゛お゛お゛お゛お゛お゛!! れいむっ!!れいむじんじゃうよお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」 「おじしゃん!!れいむをたすけてあげt、ぐぎゃああああおあおあおあおあおあおあお!!!???」 「おじさんじゃなくて、おにいさんだ、と言ったら何度分かるんだ、この低脳饅頭が(笑)」 まりさをぐいぐい踏みつけるのもほどほどにして、ありすとれいむの交尾を観察する。 しばらくすると… 「ゆううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ、すっきりー♪」 「あ…がぅ…ゆぎゅ……」 満足げなありすとは対照的に、満身創痍のれいむ。 通常なら、れいむはこの後朽ち果てると同時に新たな生命を生み出すはずなのだが… 肝心の蔓が生えてこない。ありすの方も、不思議がっている。そして… 「ぎゅ……ゆ…ゆ?…………すっきりー♪」 あろうことか、れいむの方まですっきりしてしまった。 子供はできない、朽ち果てることもない…どうやら、永遠亭の女医の避妊治療は成功らしい。 が、今度はありすの方が不満そうだ。今までとは勝手が違うから…ではなく、生まれてきた子供も犯すつも りだったらしい。 改めて考えると、とんでもない性欲魔人だな。 とにかく、これでれいむやまりさが死んでしまう心配はないから、安心して3匹まとめて飼えるな。 あれから2週間。虐待しつつ生かしつつ、僕のゆっくりライフに変化はない。 変化があるとすれば、それは3匹のゆっくりにとってだろう。 最初、交尾しても朽ち果てないことに、れいむとまりさは喜んでいた。 一方ありすは、交尾しても相手が赤ちゃんを生み出さないことを不思議がっていた。 「ゆ?どうしてありすのあかちゃんができないの!?」 そのせいか、ありすが一方的に交尾を始めることが多くなっていった。 やはり赤ちゃんができてこその交尾なのだろう。 「まままままりさあああああ!!いっしょにあぎゃちゃんづぐろうねええええええ!!!!」 「いぎゃがががががががやめでええええええええ、すっきりー♪」 それでも、相手がすっきりするだけで、赤ちゃんはできない。 自分もすっきりしているからいいのだが、なんとなく満足できないゆっくりありす。 3日もすると、その異変はありすの精神をゆっくり蝕み始める。 「どおじてええええええ!!??どおじてありずのあがちゃんできないのおおお!!??」 交尾の最中も、ありすの声は快感を伴っておらず、どちらかというと必死に子孫を残そうと頑張っているよ うに見えた。 でも、どんなに頑張っても交尾相手がすっきりするだけ、自分がすっきりするだけ。 どんなに交尾を重ねようとも、相手の頭から蔓が生えることはない。赤ちゃんができることはない。 「どおじでえええええ!!!あがぢゃんづぐりだいよおおおおお!!!!!」 数十回の交尾の末、疲れ果てたありすは部屋の隅っこでひとり喚き始めた。 すっきりはできても、本能として『子孫を残す』という点での充実が得られないからだろう。 しかし『すっきりー♪』と交尾の余韻に浸るれいむとまりさは、そんなのお構いなしである。 9日目。ありすにとっての交尾の目的は“すっきりすること”から“あかちゃんをつくること”に完全に置 き換わっていた。 「ゆぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅあがじゃんんんんんありずのあがぢゃんんんん!!!!」 「ゆふふふふふうふんほおおおおおおおおおおおおおお!!!すっきりー♪」 それでも、相手はすっきりするだけ。そのうち、ありすは自分がまったくすっきりできていないことに気づ いた。 赤ちゃんができない。自分もすっきりできない。そんな交尾に何の意味があるのか。 そこまで考えて、人間並みの知能があれば交尾をすることを止めるのだが、そこはやはりゆっくり。 交尾を止めることをせず、自分が満足するまで交尾を重ねることになる。 「あががががががあがぢゃんんんん!!!!ありずのあがぢゃんんんんんんっがおおおおおおあああ!!」 「ゆううううううううすっきりー♪んああああっほほほほほほほほすっきりー♪」 「いぎゃああああああああどおじでええええあがぢゃんできないのほおおお!! どぼじでずっぎっりできないのぼぼぼぼおおおおおおお!!!!!!?????」 交尾を終えるたびに、満足げに去っていくれいむとまりさ。 れいむとまりさは、自分の愛を正面から受け止めてくれている。ありすはそう思っている。 でも、ありすは全然満足できない。赤ちゃんができない。すっきりできない。 どうして?どうして赤ちゃんができないの?ちゃんとすっきりできるようにしてるのに。 どうして?どうしてすっきりできないの?今まではちゃんとすっきりできたのに。 どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして? どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして? 交尾のたびにすっきりよりも遥かに苦痛が上回る。 交尾のたびに流す涙で、頬の皮はすでにくしゃくしゃだ。 交尾のたびに、満足して去っていくれいむたち。 自分はいったいなんなのだろう。 れいむとまりさをすっきりさせたくて、こんなことをしてるんじゃないのに。 相手のことはどうでもよくて、自分さえすっきりできて、相手から赤ちゃんが生まれればそれでいいのに。 どうして“それ”ができないの?今まで簡単にできた“それ”がどうしてできないの? どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして? どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして? そんな疑問と、すっきりできないお預け感が、ありすの精神をえぐり続ける。 14日目。ありすに劇的な変化が訪れる。 「ゆぎゃ嗚呼ああ☆あべおっろ♪あおおああ$おおあありいり!!???」 「んほほほほおおおおおおおお!!!すっきりー♪」 声にならない叫びを上げて、れいむたちをレイプするありす。 いつもどおり、すっきりー♪な結果に至るだろうと思っているれいむたちは、その身をありすに任せる。 実際、れいむたちはすっきりするだけで、朽ちることはまったくない。 永遠亭の女医の避妊治療は、恐ろしいまでに完璧だった。 やはりダメだ。すっきりできないし、赤ちゃんもできない。 気が狂いそうになりながら…いや、既に狂ってしまったありすは、立て続けにれいむたちを犯し続ける。 この頃になると、もう一匹ずつ犯すのが面倒になって、3Pというマニアックなプレイが主なものとなってい た。 やはりダメだ。 「どおじでええええええええええええ!!!???」 どんなにあがいても、赤ちゃんができない。 「どおじでありずのあがぢゃんができないのおおおおおおおおおおおおお!!??」 どんなにあがいても、すっきりできない。 「ずっぎりできないのいやあああなのおおおおあああにいいいいいい!!??」 すっきりしようとすればするほど、すっきりできない悶々とした気持ちだけが蓄積していく。 ありすは、限界に達しようとしていた。そして… ブチッ! ありすの中から、何かが切れる音が聞こえた。 「ん頬青ああおあえrbなえt@あ@tbな@てんb@おあえtgじゃ!!!」 ありすが、壊れた。 中身のカスタードクリームを吐き出すことはしないが、涙・涎・粘液等など、ゆっくりが体の構造上出すこ とのできる、ありとあらゆる体液をブチまけながら、出鱈目に辺りを飛び跳ねている。 おいおい、ここを掃除するの誰だと思ってるんだよ… 本来ならここでありすをブチまけている所だが、もっと観察したいので放っておく。 「ゆ!?ありす!!ゆっくりいていってね!!」 「んびゃえおt8913ろじゃtbt-あ0あぽあ11111」 さすがに心配になったれいむたちの呼びかけにも、ありすは反応を示さない。 これは…完全に逝ったな。そう思ってありすを取り上げようとするが、その前にれいむたちがそれを阻んだ。 「おにいさん!!ゆっくりまってね!!!!」 「これからまりさたちが、ありすといっしょにすっきりするからね!!」 あぁ、そういうことね。 れいむたちにとって、ありすは“すっきりする”ための道具と化していたのだ。 どんなに交尾を重ねても朽ちない、赤ちゃんができない。 そうとなれば、あとはすっきりするための交尾を重ねるだけ。 人間で言えば“セフレ”のようなものだ。 でも、れいむたちはありすが今までまったくすっきりできなかったことに、気づいていないのだろうか? 「んんんほほほほほほおおおおおおおお、すっきりー♪」 「あががががががんぎょおおおおおおおおおおおお、すっきりー♪」 早々にフィニッシュする二匹。そして、次のありすの絶叫に、僕は自分の耳を疑った。 「和えが得荻は@絵t@q034うtq90う4t09q@0ぴっ………すっきりー♪」 今…何といった?すっきりって言ったのか? 確かに言った。ここ2週間すっきりできなかったありすが、“すっきりー♪”と言ったのだ。 次の瞬間、さらに驚くべき現象を僕は目にすることになる。 ありすの頭から、蔓が数本生えてきたのだ。 次々と実がなっていき、それは小さな小さなゆっくりの姿へと変わっていく。 そうか、やっと理解できた。れいむやまりさが赤ちゃんを作る代わりに、ありすが赤ちゃんを作ったのだ。 すっきりできない原因を排除したことで、やっとすっきりすることができたありす。 その満足そうな表情ときたら、今にも天に昇っていきそうなものだった。 だがおかしい、永遠亭の女医の避妊治療は完璧のはず。 これで赤ちゃんが生まれては、避妊治療の意味がない。 そう思った僕だったが、次のありすの行動を見て安心する。 意識を取り戻したありすは、再び発狂して辺りを飛び跳ね始める。 その衝撃で蔓はすべて切断され、赤ちゃんゆっくりは成長過程で切り離されてしまったのだ。 まだ緑色の、未熟児……これでは、「ゆっくりちていってにぇ!」などとかわいい声を発することもできな いだろう。 一方のありすは、と言うと… 「亜rht34hpつぷはいうhrぎうあg費4おあrぎおあrぎいありおおいあろいj!!!!」 一度キレてしまった“モノ”は元に戻らないらしい。 ありすは二度と“とかいは”の知性を取り戻すことはなく… 「ゆぎゅ……ゆっ………ゆっ……ふっ……」 時折、視界に入ったり音が聞こえたときだけ、ぴくっと反応するだけの…物言わぬゆっくりとなった。 れいむとまりさは、ありすのことなどすっかり忘れて別の部屋で遊んでいる。 毎日死なない程度に虐待してやり恐怖を植えつけてあるから、物を壊すことはないだろう。 「ゆ………ゆ………」 そこらへんの雑草を口に突っ込むと、反射的に咀嚼を始めるありす。 2週間前の、都会派気取りのありすの面影は……どこにもない。 …でも。 2週間まったくすっきりできなかったありすにとって、これこそが最高のすっきりなのかもしれない… あとがき 虐待スレ9の551あたりを読んで、勢いで書いてみたよ!! 酒の勢いって怖いね!! これを入れて5作ぐらい書いたけど、全部酒の勢いで書いたよ!! それじゃみんな、すっきりしていってね!! 作:避妊ありすの人
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「色仕掛けゆっくり1」の続きです。 うんうん描写とにかく多し。苦手な人は閲覧をお勧めしません。 1回のすっきりで相手の唯一の興味の対象となる。(この状態でも他のゆっくりとの交流は普通に行う) 2〜3回のすっきりで相手はありすとだけの生活を望むようになる(この状態では、他のゆっくりと交流するのを避け始める) 4〜7回のすっきりで相手はほぼ全ての命令を聞くようになる。(ただし、目の前の他のゆっくりや、自分を殺すような命令は拒否する) 8回以上のすっきりで相手は確実に命令通りに行動をするになる。 ※まりさ、れいむ、ありす種に対するすっきりの場合 ※個体差はあるが、まりさ種に対しての方が若干強い効力が出る ※以上のデータはすりすり型のすっきりの場合であり、ぺにまむ型の場合はさらに少ない回数で効力が現れる ※すっきりの最中、軽いすりすりの段階ですでに効果は出始める ※効力は累積し、1週間程度は同じ状態が続く … 加工所への報告を纏めながらも、俺は困惑していた。 あの一件以来、加工所から送られてきた「色仕掛けありす」は俺の言うことを前より素直に聞くようになっていた。 ありすのお相手となったゆっくりは基本的に処分していたので、ありすは何匹ものゆっくりとカップルになったが、 どのお相手とも深い関係になることはなかった。さらには、相手が自分の特殊な体質によって惚れている、という事実も変わらなかった。 それでもすっきりには不自由しないし、食事も満足に食べられる。傍目に見ればすごくゆっくりとしたゆっくりだった。 ありすもそれが分かっているのだろう。 高いプライドからお相手が見つからず、餌も一人で集めなければならない野生の頃よりは明らかにゆっくりできていた。 餡子脳ではそれ以上の事は考えないようにしていた。 そんな事はどうでもよく、俺は困惑していた。 虐待に使えると思ってこの変わったありすのモニターを引き受けたが、マンネリ化は否めなかった。 どんなゆっくりでもこのありすが命令を下せば自ら命を絶った。 ゲスまりさを見つけた時は絶食させて殺してみたりした。紙やすりに自分からすーりすーりをさせたこともあった。 しかし、満たされない。 明らかにこのありすの能力はゲームバランスを崩している。 一種のゲーム。いかに恐怖・絶望を与え、自分のゆん生を後悔させてやるかを考えるのが虐待だ。 時には自滅させるのに綿密な計画を立てることも必要だろう。しかし、その上でやり遂げた虐待には何物にも代えがたい快感がある。 それをこのありすはすっきり数回だけで達成してしまう。 それに、終始ありすにメロメロなゆっくりが幸せそうなのも虐待の意欲を無くさせる。 実際にその餡子は凡庸な味で、適切な方法で得られた餡子の極上の甘味には到底及ばない。 こんな時には散歩に出よう。良い考えが浮かぶかもしれない。 外は既に暗くなっていたが、足は自然と森の方へと向かっていた。ゆっくりが多く棲んでいる近所の森だ。 単純に静かで好きな場所でもあるのだが、やっぱりゆっくりを捕らえにここに入ることが多い。 そういえば、ありすが送られてきてから、こうして自分の足でゆっくりを見つけてくることも少なくなったと思う。 「ゆっゆー♪にんげんさん、とおりたいならつうこうりょうちょうだいね!」 「あまあまちょうだいね!」 「「「ちょうりゃいね!」」」 「こどもたちにもしっかりあげてね!」 考えごとをしながら歩いていると、ゆっくりの家族に出くわした。 れいむとまりさのカップルに、子ゆっくり3匹、赤ゆっくり5匹。なかなかの大所帯だ。すぐ後ろには多分こいつらの巣であろう穴ぐらがある。 普段ならばこの家族を家に連れて帰って楽しむところなのだが… そうだ!おれはとある考えを閃いた。 とりあえずバッグの中から出した溶けかけのチョコレートをやり、近くの木に印を付けておく。馴染みの森なので大体の場所は分かるが一応、だ。 ゆっくり家族に「また来るね」と告げた後、期待に胸を躍らせながら家路についた。 一方こちらはゆっくり家族。 「ばかなにんげんさんのおかげでゆっくりできるね!」 「あしたもくるから、しばらくえさにはこまらないね!」 「ゆ!きっとれいむのいもうとたちのかわいさにむちゅうなんだね!」 「「ゆっきゅりー!!」」 親れいむは安心していた。先ほどの人間は素直に餌をくれるから、これからは餌をとりに行かなくても良さそうだ。 本当に馬鹿な人間だ。通行料を求めただけなのに、餌だけやってすぐさま引き返していった。 まあ、それで自分たちがゆっくりできているのだから文句はない。 餌の心配がなくなったところで、れいむはまりさにスキンシップをはかり始めた。 このカップル、暇さえあればこうしてすりすりをしている。だからこそ今の大家族があるのだが、その無計画性で死なせてしまった子供も数多い。 本当に浅はかだった。人間がすぐ明日にやってくるかは分からないのに、もう自分たちの幸せは約束されたと思い込んでいる。 「すーり♪すーり♪」 「ゆゆっ!?れいむ、あかちゃんふえちゃうよ!?」 「ごはんはにんげんさんがもってきてくれるから、あんしんだよ!」 「れいむ、そうだね!すーり♪すーり♪」 「すーりすーり、ゆっ…ゆっ…ゆっ…」 発情し出す2匹。 「「すっきりー!!!」」 すっきりを終え、まりさの頭には一本の茎が生え始めていた。 一般的に、植物型にんっしんっ!をするのはれいむの方だが、この家族ではいつもまりさであった。 きっとれいむが積極的にすっきりをしようとしていることが関係しているのだろう。 れいむはとにかく幸せだった。大好きなまりさといつでもすりすりできる。家族にも恵まれている。 本当にゆっくりとした気分で眠りについた。 次の朝、穴の外で何かの声がしたので目が覚めた。もっとゆっくり寝ていたいのに…と思ったが、それが昨日の人間だと分かるとすぐに飛び起きた。 「ゆっ!にんげんさんごはんちょうだいね!ごはんおいたらさっさとどっかにいってね!」 赤ん坊はまだ寝ているし、自分ももっと寝たい。だからこの人間は食事を自分たちにくれたら、すぐにここを立ち去るべきなのだ。 ところが男の行動はれいむの予想を遥かに上回るものだった。 「ゆ゛うううう!やめてね!!」 男はおたまを長くしたようなものを使って、巣の奥からどんどん自分の家族をかき出していく。 ごろごろと転がった先には箱があり、次々と家族はその中に収められていった。 れいむはそのゆっくりできない棒に噛みついたが、一緒に箱の中に引きずりこまれるだけだった。そして、箱が閉じられた。中は闇。 「ゆぅ…おきゃーしゃん、ここどこ?」 「れいむ、なんだかゆっくりできないよ!」 「みんな!きのうのじじいがうらぎったんだよ!!」 次々と起き出す中の家族。彼女らにれいむは状況を説明した。 今まで人間に捕まえられたゆっくりの話は聞いていた。自分の棲む森でも、何匹かそういった事件に遭ったゆっくりを知っている。 しかし、まさか自分たちがそんなことになるとは…ゆっくりできていたのに… 家族は皆、騒ぎ始めた。騒げばこの男が出してくれると思った。 中にはおうたを歌い出す子ゆっくりもいた。人間さんがゆっくりしてくれれば、きっと出してくれるだろう、そんな考えだった。 れいむは必死に子供の可愛さ、いかに自分がゆっくりしていたかを訴えた。そうすれば感嘆した男が逃がしてくれると思った。 ふと男が立ち止まる。そして、箱が開けられた。 「ゆっ!そとにでられるよ!ゆっくりできないじじいはゆっくりしね!」 少し文句を言うタイミングはおかしかった気がするが、これで自分たちは人間の手から離れたと確信した。 箱がひっくり返され、ぼとぼとと落とされる家族、親まりさだけは頭に茎が生えているのもあって、男の手によってゆっくりと地面に置かれた。 これでもう自由の身だ。逃げよう。そう思って前に跳ね始めるれいむ。 べちん!と音を立てて、れいむは地面にへたりこんだ。 聞いたことがある、人間が使うというゆっくりできない箱だ。 外が見えるのに、なぜか出られないという素敵に悪趣味な箱なのだと聞いていた。見ればここは既に男の家の中だ。 家族の気分は沈んでいた。もう文句も言う元気も残っていなかった。 そんな家族を尻目に、れいむはひたすら男への罵倒を続けていた。それも男が居なくなると止んだ。 男はしばらくすると帰って来た。 「ゆ!れいむたちをだす気になったね!はやくだしたらこのおうちからでてってね!」 れいむは運ばれる途中で傷ついた子供たちをぺーろぺーろするのを止めて、男に抗議した。 しかし、それは聞き遂げられず、代わりにもう一つの透明な箱がれいむの家族たちの箱の隣に置かれた。 両方の箱には小さな穴が開いており、ぴったりその穴が合わせるように箱は配置された。 中にいたのはありすだった。まりさに夢中のれいむも、一瞬心を奪われるほどに綺麗なありすだった。 整えられた髪、状態の良いすべすべの肌。 お相手のまりさもありすに見とれているのに気づき、れいむはまりさをちょっと小突いた。 「君たちはこれからゆっくり虐めてあげるからね!」 そう男は二つのケースに向かって言い放ち、赤れいむを2匹、箱の中から取り上げた。 「ゆー!おしょらをとんでりゅみちゃい!!」 「やべでね!!あかちゃんにひどいことしないでね!!」 「あかちゃん!はやくにげてね!!」 呑気にはしゃぐ子供たち。れいむは分かっていた。この男は手始めに自分の赤ちゃんに何かするつもりだ。 男は何やら糸とそれを結びつけた針を取り出すと、針を赤れいむ達に突き刺した。 「ぴぎぃ!」 「ゆ゛っ!ゆ゛っ!」 男は赤れいむが針の痛みで痙攣している間に、赤れいむ達の中を通っている糸で手早く輪っかを作った。 赤ゆっくりのアクセサリーと言ったところか。 「かわいいでしょ?ほら、二つ揃ってさくらんぼみたいだね!」 「れいむのあかちゃんにひどいことしないでね!」 男はそのまま2匹のれいむをゆっくり引き離していく。 どんどん糸が赤れいむの肌に食い込んでいく。 「ひっ…ひっ…ひっ…かはっ!!」 形を歪められて満足に息を吸うことのできない赤れいむが呻きだすが、それもすぐに聞こえなくなった。 食い込んだ糸が赤れいむの口まで達したのだ。 後は「こぉ…こぉ…」と息を漏らすだけの不思議饅頭となった。 男は糸を取り外し、それを箱に戻した。 「あかちゃん…ゆっくりしていってね…」 「あがぢゃん…へんじしてよおお!!」 「こぉ…こぉ…こひゅ…」 赤ゆっくりが息をしなくなったのを見届け、満足した顔で男は部屋を後にした。 「ゆ…きをおとさねいでね…のこりのあかちゃんをまもってあげてね」 「ゆっ!うるさいよ!ひとりみのありすはゆっくりだまってね!」 「ゆぅ…」 「ぷんぷん!ありすはひとりっきりだから、まりさとれいむのつらさがわからないんだね!」 悲観に暮れるれいむとまりさに穴から話しかけるありす。 れいむは余計な御世話だと思った。子供を失って悲しまないことがあろうか。 一方で、一理あるとも思った。赤ちゃんは死んでしまったが、まだ子供は6匹もいる。 それに、まりさの頭に生えた茎には既に5匹の赤ちゃんが生っていた。 たかが2匹だ、とまでは思わなかったが、まだまだ十分ゆっくりできる、と考え、残りの子供たちとゆっくりしようと思った。 そんなこんなでれいむが子供達におうたを歌っていると、男が入ってきた。 「れいむのこどもにひどいことしないでね!ぷくぅー!」 「食事を持ってきただけなんだけど」 「ゆっ!ごはんならゆっくりしないでちょうだいね!」 男はボウルから生ゴミをオタマですくいとり、箱に流し入れた。 「「「うわぁぁん!くちゃいよー!!!」」」 「「おかーさんゆっくりできなぃいいいぃい!!」」 一気に騒がしくなる家族。 ありすの箱にも生ゴミが入れられたが、それは1匹分だからか、そこまで多くなかった。 対して、れいむの家族の箱は、生ゴミが地面のほとんど占めるほどの悲惨な状況だった。 生ゴミを食べることはもちろん、生ゴミにあんよが浸かっていたらゆっくりできるわけがない。 家族は寄り集まり、隅の方でブルブルと震えていた。 れいむも頭の上に赤ちゃん3匹をのせて避難させていた。 既に男は部屋から消えていて、その日は生ゴミの悪臭に耐えながら一晩を過ごすこととなった。 次の日、男は朝から現れず、夜になると部屋に現われた。 「ご飯食べないのかい?お腹すいているだろう?」 「おにーさんがこんなくさいものいれるからでしょおおおおお!!!」 ため息をついて男は部屋を出ていった。 確かに限界だ。このまま餓死するわけにもいかない。 れいむは生ゴミに口をつけ始めた。 「おかーしゃん!きちゃないよ!?」 「たべなきゃゆっくりできなくなるよ…」 嫌がる子供にも、生ゴミの中から危険そうなものを除いて与えた。 刺激物などは赤ゆっくりにとって命取りとなる。そこで、いったんれいむが口に含み、それを口移しで赤ゆっくりに食べさせた。 それを見て、子ゆっくりやまりさも生ゴミを食べ始めた。 さらには隣の箱のありすまでも生ゴミを漁り始めた。 こうして食事の時間を終え、とりあえず腹を満たしたところでゆっくり達は眠りについた。 ガサガサ… 夜中に音がした。なんだろうか、とれいむは思ったが、すぐに眠りに落ちていった。 次の日、いつもと変わらない朝を迎えた。 しかし、様子がおかしかったのはお相手のまりさだった。 明らかにそわそわしている。そして、ずっと隣の箱のありすを見つめている。 焦点の合っていない目でぼーっとありすを見つめるまりさに、れいむは不気味さすら感じた。 「まりさ、どうしたの?」 「れれ、れいむ、起きたんだねっ!ゆーゆっくりしていってねっ!」 明らかに態度がいつもと違っていたが、とくに気にすることもなかった。というよりも気にすることができなくなった。 「ぽんぽんがいちゃいよー!!」 「れいむのぽんぽんがゆっくりできてないよ!」 子供たちが腹痛を訴え始めたのだ。うんうんの兆候である。 普通にゆっくり達が生活している分には滅多にうんうんをしない。 中にはうんうんに一種の快感を覚え、食事のたびに排泄するゆっくりもいるようだが、れいむ達はそうではなかった。 ただ、昨日のように汚い食物を一気に体内に取り入れたときは別である。 そもそもは、餡子の中から害になる成分を抽出してうんうんとして外に排泄するのである。 生ゴミをたくさん食べたので、すぐにでも排泄する必要が出てきたのだろう。 「あかちゃん!ゆっくりがまんしてね!」 「まりちゃはもうがまんできないよ!うんうんでりゅよ!」 「ゆぎっ…ゆぎっ…れいむもでるよ…」 いくら言い聞かせても体の生理的な欲求には逆らえない。次々とうんうんを出していく子供達。 あっという間にうんうんが床に並ぶ。そして… 「ゆぅ…くちゃいよー!!」 折角生ゴミをあらかた食べ終えて綺麗になった箱の中が再び臭くなってしまった。 生ゴミの中からゆっくりできない成分を寄せ集めて排出したものだから、ゆっくりにとっては物凄く臭いのである。 「ゆっ!じぶんたちのせいなんだから、こんどこそゆっくりがまんしてね!!」 子供たちを叱りつけて自分も我慢する他はない。 「まりさもがまんしてね…」 お相手のまりさを見て愕然とした。またあのありすの方を見てにへらと笑っているのだ。 まりさの視線の先を見るとありすもうんうんをしている。 何だというのか、こんな時に。ありすなんかに夢中になって。小突くと一旦はこっちを向いたが、 しばらくありすの方が気になって仕方がないようだった。 その日も虐待はなかったが、生ゴミが入れられた。生きるためには食べなければならない。 殺されないだけましだとは思ったが、全然ゆっくりできていなかった。 また明日はうんうん騒動に脅かされるかと思うと、れいむの気分は沈む一方だった。 お相手のまりさが自分に興味がなくなってしまったようにみえるのも、一層れいむを憂鬱にさせた。 ガサガサ… その夜も物音がしたが、れいむは全く気付かなかった。 「ぽんぽんがいちゃいよぉぉぉお!!」 れいむはこの連鎖をどうにかしなければいけないと思った。昨日のうんうんは箱の中に残ったままだ。 相変わらず、というか昨日よりひどい顔でにへらとしているまりさ。正直気持ち悪い。 そこでれいむは思いついた。これで自分の気分も晴れる。 1匹の赤まりさを口加えると、隣の箱との穴へと持っていく。 「むこうにうんうんしてね!」 「ゆっくりわかちゃよ!うーん…うーん…ゆふぅ〜」 穴からありすのいる反対側の箱へとうんうんが流れ込む。 これでこちら側への被害を最小限に抑えられる。れいむは我ながら名案だと思った。 「ゆっくりやめてね!!ありすがかわいそうだよ!!」 まりさだ。なんだってこいつはこんなにもありすの事ばかりなのか。 昔は餌を取るのも上手く、群れでも憧れのゆっくりだった。 群れを離れて、初めてすっきりをした日を今でも忘れない。本当にゆっくりしたまりさだった。 でもそれはもう過去のことだ。れいむの気持ちはまりさから離れかけていた。 まりさを無視して子供を1匹1匹くわえ、ありすの箱にうんうんさせる。 6匹の子供にうんうんさせ終えると、自分も向こう側へうんうんした。 ありすが涙を流すだけで、何も抗議しないのが好都合だ。気の弱いありすだとれいむは思った。 しかし、その考えは間違っていた。 「おかえしにこれをあげるわ!」 ありすは仕返しとばかりにこちらの箱に向かってうんうんをし始めたのだ。 れいむが止める暇もなく、こちら側にカスタードのうんうんが溜まった。止めようにも止める方法がないのだが。 れいむはすぐに激怒したが、よく考えれば1対8である。いや、2対7か。 どっちにしろこれを続ければ量としてはこちら側が有利だ。そう思ってゆっくりすることにした。 ご飯は相変わらず一日一回、生ゴミだったが、生きてさえいればいいと思いはじめていた。 ガサガサ… 次の朝、再び子供達がうんうんをする段になって気づいた。 昨日まであったありすのうんうんが無くなっている。 これは餡子脳で考えてもおかしかった。昨日、寝る前まではあったはずだ。夜の間にあの男が掃除したというのも考えにくい。 なぜ…?? 「おかーさん、ぽんぽんが!!」 子供の叫びで我に返り、ありすの箱へと処理させた。 ありすもこちらに処理をする。 まりさはこちら側でうんうんをしていた。本当にやっていられない。 その夜、れいむは薄目を開けて何が起こるかを観察していた。 あいすのうんうん失踪事件の原因を突き止めたかったのだ。 しばらくすると、視界に何かが入りこんできた。 まりさだった。 そろりそろりと音をたてないようにありすのうんうんに近づいていくが、その表情は異常だった。 目は一点、ありすのうんうんを見つめて、涎を垂らしながら這っていく。 外にいる時に、れいぱー化したありすを見たことがあるが、まるでその姿そのものだった。 れいぱーありすの方がまだマシというものだ。相手はゆっくりなのだから。 「うんうんぅぅぅ…ありずのうんうんぅ…」 うわ言のように呟くまりさ。ありすのうんうんのすぐ傍まで近寄り、そして…頬張る 「うっめ!めっちゃうっめぇぇぇう!」 そんなはずはなかった。生ゴミから作りだされたうんうんなのだ、「おいしい」というのはゆっくりの本能に反する。 それはれいむにも理解できた。 物凄い速度でうんうんを食べ続けるまりさ。はっきり言って嫌悪感しか感じられなかった。 「ありずのう゛んうん、すーりすりー♪」 もう見ていられなかった。 明日になったらまりさに直接言おう、そう思った。きっと分かってくれる。そう思わないとやっていけなかった。 れいむは嫌なことを忘れるように眠りについた。 れいむは気付かなかったが、同じ部屋で、まりさの行動を見てあの男がほくそ笑んでいた。 「まりさ、れいむが眠ったよ。ありすとすっきりできるね」 「!!!!!ありずっ!!!い!!」 「静かに、れいむが起きちゃうよ、さあこっちにおいで」 俺は両方の箱を開けて、まりさとありすを取り出す。 ああ、はあはあしちゃって…そうか、もう4回目か。 一人納得して、俺はありすとまりさを別室に持っていく。 そこで一回だけすっきりを行わせる。 そしてまりさを元の箱に戻した。 「頑張ってるみたいだね、ありす」 「ゆ!ありすがんばってるわよ!でもなまごみはとかいはじゃないわね!」 「そうだな…じゃあそろそろ次の段階に入るか」 全ては俺の計画の一部だった。 ありすを使って1匹のゆっくりを洗脳してもつまらない。 そこで狙うはパートナーだ。家族との信頼関係を崩しながら虐待する。これが俺の狙い。 最後にあの親れいむにはゆっくりに有らざる空虚感を抱いて死んでもらう。 親まりさは既に俺の手の中。しかし、まだまだ序の口。 ターゲットのゆっくりはあと何匹もいる。 そう、次は子供だ。 続く 【あとがき】 なんだか変な話になってしまいました。 自分でも正直これはどうなのか?と思うくらい「うんうん」という言葉を使った気がします。 苦手な方はここまで読んでないと思いますが、一応謝っておきます。すみません。 次回は子供編、になるのかな…?
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※現代もの ※すごいぬるい 「う〜寒い寒い。」 不本意な残業を片付け、僕が最寄り駅へと帰ってきたのは夜中の10時を回る頃であった。 このまま家路を急いでもいいのだが、なんとなく温かい物が欲しい。 体感では氷点下を下回るであろう身を刺すような寒さに、僕は完全に参っていた。 「何か温かいのが欲しいな・・・缶コーヒーでも買って帰ろう。」 運よく駅から5分ほど歩いた人気の無い街頭の下で、お目当ての自販機を見つけた。 財布から小銭を3枚出し、投入する。 チャリンと小気味の良い音が響いて、購入可能である事を示すランプが点灯した。 「この自販機、半分がつめた〜いだけど、この時期に買う奴とかいるのかな・・・」 そんなどうでもよい事を考えつつ、僕は缶コーヒーのボタンを押した。 普段ならガコンッというこれまた気分の良い音を立てて缶コーヒーが出てくるのであろうが、今回は違った。 ベチッ 「ゆぎゅっ!・・・・っぅぁああ゙あっつゔうぅゔゔうぅぅゔうゔううゔううう!!!!??!」 「うお!?」 流石の僕も驚いた。何が流石なのかは判らないが。 自販機の取出口から変な音がしたと思ったら、すぐさま絶叫に変わり響き渡ったのだ。 一体何なのだろうか、僕はすぐに取り出し口を開けて中を覗き込んだ。 「ゆ゙っ・・・ゆ゙っ・・・」 ゆっくりだ。暗くて良く見えないが、取り出し口の中にグレープフルーツ大のゆっくりれいむらしき物がうずくまっていた。 熱々の缶コーヒーが直撃したのだろう。打撃と熱のコンボを叩き込まれたれいむはかなりのダメージを受けているようだった。 「おーい、大丈夫か?」 とりあえず声をかけてみる。こんな場所に入り込んでいたれいむの自業自得ではあるが、 そのまま死なれても寝覚めの悪い事になりそうだったからだ。 「ゆ゙ぅ・・・な゙に?なんなの?いだいしあづいよ・・・」 なんとも頭の悪い返事が帰ってきた。見た感じは喋れない程の重症ではなさそうだった。 とりあえずこのままでは如何ともし難い。缶コーヒーも取り出せないので、僕はれいむを引きずり出す事にした。 ついでに火傷の治療も兼ねてもう一本オレンジジュースを買うことにした。 今買った缶コーヒーをやっても良かったのだが、なんとなくカフェインが悪影響を及ぼしそうだったので避けておいた。 「ゆぅ・・・つめたくてきもちいいよ・・・」 120円のつぶつぶオレンジジュースをよく振り、れいむに飲ませてやる。 ついでに火傷している場所に少し垂らしてやると、れいむはみるみる回復していった。 5分もするとれいむは完全に回復してしまった。相変わらずの不思議生物っぷりである。 そろそろまともな会話もできるだろうか、僕はれいむに問い正してみることにした。 「なぁれいむ、どうしてあんな所に入ってたんだ?」 「ゆ!おそとはさむかったからあそこでゆっくりしてたよ!!あったかいしすごくゆっくりできたよ!!」 その理由は大体僕の予想してた通りであった。田舎の自販機とかは蜘蛛とかよく入ってるもんなぁ。 と言うかゆっくりできてねえだろ・・・もう忘れたのだろうか、流石餡子脳。 「れいむ、あそこは温かくてゆっくりできてたかもしれないけど、入ってるとゆっくりできなくなるんだよ。」 僕はれいむに言い聞かせてやる事にした。我ながら意味不明な説明だが。 それでもゆっくりの餡子脳には十分な説明だったらしい。れいむはすぐに納得してくれた。 「ゆ!?そうなのおにいさん!あんなにゆっくりできてたのに・・・ ・・・わかったよ!れいむはべつのゆっくりプレイスをさがすよ! おにいさん、ありがとうね!」 「分かってくれて嬉しいよ。それじゃあな、気をつけろよ。」 野生にはゲスが多いという。しかしこのれいむは聞き分けの良い部類らしかった。 靴を餡子で汚す結果にならなかった事を僕は安心した。 缶コーヒーを片手に僕は歩き出す。後ろの方でれいむがピョンピョン飛び跳ね続けていた。 缶コーヒーも飲み終え、幾分温まった僕は家路を急いでいた。 しかし、15分ほど歩いたところで、一つの違和感に、気付いた。 「あいつらって・・・取り出し口の蓋開けられたっけ・・・?」 そう、ジュースの自動販売機の蓋は外開きなのである。 内開きであれば無理矢理入る事もできるが、外開きの場合では手の無いゆっくりには蓋を開けることが出来ない。 実はこの話には真相があったのだ。 〜約1時間前〜 「ゆぅぅぅん・・・さむいよ・・・ゆっくりできないよ・・・」 吹き付ける風に震えている野良ゆっくりは紛れも無い、あのれいむである。 おうちを持たないこのれいむは、日々寒さと闘い、ゆっくりできない日々を送っていた。 そんな繰り返しかのように思えた日々の中で、れいむの前にその男は現れた。 「やぁ!僕は虐待お兄さん!」 後の経過は諸君等が想像する通りであろう。 温かくてゆっくりできる場所があると誘われたれいむは、お兄さんの手によって自販機にぶち込まれてしまった。 中から出てくる事は簡単であるが、こんなゆっくりした環境からわざわざ出てくる事は無いだろうというお兄さんの考えであった。 中でのゆっくりした環境と、缶コーヒーがぶち当たったショックとその後の気持ち良い治療のせいで、れいむの餡子脳からは 「誰かに入れられた」という記憶がすっぽり抜けて落ちてしまっていたのだ。 時期を同じくして、青年の町では怪事件が頻発した。 夜な夜な自販機の取出し口にゆっくりが詰め込まれているというものだった。 比較的体の小さいあのれいむはまだ幸運な方であった。 酷いものになると無理矢理詰め込まれ、自力での脱出はおろか人が引っ張っても脱出が不可能なゆっくりがいた。 一家全員が無理矢理押し込まれて地獄絵図さながらになっていたケースもあったという。 そういったゆっくりは職員に生きたままミンチにされ、引きずり出されていった。 また、別の誰かのイタズラなのか、取り出し口の中で缶に埋もれて死んでいたゆっくりもいたそうだ。 その自販機はあったか〜いの方が全て売り切れになっていたらしい。 1週間後 今日も不本意な残業を片付け、僕は家路を急いでいた。 あのれいむは元気でやっているだろうか、願わくばどこかで無事にゆっくりしていて欲しい。 そう思いつつ僕はポケットに手を突っ込み、歩を進める。 自販機には、立ち寄らなかった。 終 あれ、虐待してねえや
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山の食料が足らず、里に下りてきたゆっくりまりさとゆっくりれいむが人間にとっ捕まり、晒し者にされていた。 博麗神社の素敵な巫女、博麗霊夢が捕り物の応援に駆けつけ、この減らず口だけは一人前のカスどもを率先して拷問、もとい虐待した。 手加減はされているものの、手酷く殴られたために痣に塗れ、口からは少量とはいえ餡を吐き、中を傷つけぬようしかも歪に皮を剥がれ、挙句に目を刳り貫かれて完全に盲にされてしまった。髪飾りは仲間が認識できるよう残されていたが、どう見ても原型が留められていない。 余りの激痛に耐えられず、金切り声を上げていた口も、歯を麻酔なしで全て抜かれた挙句、舌まで抜かれ、しまいに不要だろうと言わんばかりに縫い付けられてしまっていた。 そして田んぼの中の案山子を掛けていた棒に2匹は吊るし上げられ、将に鳥の餌にならんとする一歩手前であった。 村の衆は一応あの2匹から聴取できているため、もはや生かしておく必要はなかった。だが、霊夢のたっての希望であの醜い不快なる化物を晒し上げ、仲間に見せつけることとなったためだ。 さて、親の帰りが遅く迎えに来た子ゆっくりれいむはこの風景を見て余りのことに失禁してしまった。 すぐに助けようとしたが、運命のいたずらか、ゆっくりの跳躍力で届くはずのない位置に2匹はいた。そして幾ら飛びついても届かぬことにジレンマを感じつつ、それでも諦めない。しがない餡子脳は己の限界に気づかない。否、気づけない。そして別の解決手段も生み出さない。生み出せない。 そのうち夜が更け、疲れ果てたれいむは安全な場所に隠れいつしか眠りこけた。 夜半時、バサバサという音と声に鳴らぬ断末魔がしじまに飲み込まれていった。 朝方、目を覚ましたゆっくりれいむはあの2匹がくくりつけられていた棒に居ないことに気がついた。 きっとにげだせたにちがいない。そう思って、ゆっくりしていってねと喜びの声を上げる。だが当然そこには誰もいない。 隠れん坊しているんだと単純な餡子脳で判断し、そこら辺を跳び回っていた。 「どぼじてみづがらなびのおおおおおおお??????!!!!!!」 昼になっても見つけることができず、空腹と苛立ちが交錯し、絶望の悲鳴を上げる。 当たり前だ。棒の根元をよく見るとまりさの帽子とれいむの髪飾りが落ちていることに気がつく筈。だが所詮はゆっくり。そこまで知恵は回らん。 余りの空腹に耐えかね捜索を諦め、目についた母屋の方へ向かう。だがそこが地獄の一丁目だとは露も知らぬ哀れな饅頭であった。 軒先にぴょんと上がり、中に誰も居ないことを認め、嬉しそうに入っていく。窓が不自然に開いていることを不審とも思わず、純真なことである。 さて思い通りに事が進み、それなりに食料があることがわかるといつものように、 「ゆゆっ!!ここはれいむのゆっくりプレイスだね。ゆっくりしていくよ!!!」 とほざきよる。 勿論賢いものなら、開城の計であることがわかる筈。勿論真に罠も仕掛けられているという点で本家とは異なるが。 早速に餌を漁るゆっくりれいむ。食事には毒は入っておらず、大好きな甘い菓子類ばかりであった。 「あまあまおいしい!しあわせ」 次から次へと手をつける。疲れた体と本来の旺盛なる食欲がそれを増長する。 「むうしゃ!むうしゃ!しあわせ!!」 だが生物の最も大きい隙というのは食事時と睡眠時にある。 れいむは食事に夢中で背後の人影に気づかず、なお食い続ける。 蓋し、こんなことばかりやっているから、余程賢い群れでない限り、冬を越せないのだと霊夢は忍び足で近づきながら考える。 そして見事ゆっくりれいむは霊夢の手で捕獲されるに至った。 しかし、ゆっくりれいむは何もわかっていない。 にへら顔で 「おねえさん!ゆっくりしていってねええええええ!!!!」 菓子を補給できたため満腹感と元々の尊大さが手伝って、いつも以上に無防備である。 この鬼巫女の恐ろしさがイマイチ理解できていない。望むべくもないが。 さて、悪意たっぷりの優しい笑顔で霊夢は 「ゆっくりしていくね」 と返す。 にぱあと笑うゆっくり。霊夢の嗜虐心が鎌首を擡げる笑顔だ。 どうやって料理してあげようかしら、とどす黒く渦巻く巫女の心。 取り敢えず頬を引っ張ってみる。よく伸びるものね、もう少し強くしてみようかしら。 霊夢は先程より強く引っ張る。すると、 「びだっだだだだだだ!!!!びだいいいいいいい!!!!」 まるでこの世のものとは思えぬ醜い面で悲鳴を上げるれいむ。 眼球が飛び出んばかりに瞼がかっと見開き、舌を突き出している。まるで漫画だ。 「あら、ごめんね。ちょっとやりすぎたみたい」 何の悪びれもなくサラっと言う。さすが鬼巫女。スキマの嫁。 「れいむをいじめるおねえさんとゆっくりできないね!!ゆっくりしね!!」 定型文句を吐き罵るが、霊夢は屈するはずがない。 「あんた、自分の立場わかってんの?ここはあんたのうちじゃないの。」 「れいむがはじめにみつけたからここはれいむのゆっくりプレイスだよ。おねえさんこそひとのおうちにかってにあがってきてなにをいうの。ばかなの?しぬの?」 地雷を踏んでしまった。怒らせてはならぬ人を怒らせるとどうなるかということが考えられぬゆっくりこそ死ぬべきである。 「そう、それじゃ身の程というものを嫌という程叩き込んであげる。」 「ゆっ?おねえさん、なにするの?どうしてれいむをおなべにいれようとするの?ゆっくりやめてね!!」 だが動き出した歯車を止めるには歯車を破壊するより術がない。非力のゆっくりには霊夢は倒せない。如何なる妖怪をも屈して来た巫女に敵う筈がない。 「ゆっゆゆゆううううううううううううううううう!!!」 なんということか。霊夢は火にかけた油にゆっくりの足をつけた。しかもゆっくりちょっとずつ。 「でいぶのあんよがあああああああああああ!!!!」 薄汚い饅頭がさらに薄汚くなっている。自分の足と称するものが揚げ饅になったのがそんなに苦痛なのか。そもそも人間はゆっくりをまともに相手することが苦痛であるのだが。 涙と鼻水と餡でぐしょぐしょになるれいむ。霊夢の責苦は続く。 「あんたはさっきいい思いできたでしょう?甘いものたくさん食べられて。今度は私がいい思いさせてもらわよ。」 「ゆっ?な、なにいっているのおねえさん。ばかじゃないの。しぬのおおおおおおおおおおお!!!!!いだいいだい、ごめんなじゃあああああああああいいい」 言いたいことはそれだけかと言わんばかりに齧る。歯型がくっきりと残る傷口。良質の甘いものを過剰摂取したため皮と餡が肥大化していて大変お得である。容量があってなかなか楽しく虐め殺せそうね。 たとえ子ゆっくりであってもまともに躾けられていない場合は、下種同然である。 霊夢の体罰は恐ろしかった。親と同等、否それ以上に激しく責め立てる。さすがはスキマの嫁。だが今回は目を残し、口も元のままに置いていた。そして何のためか浣腸や肛門拡張等に重点を置いていた。 その答えは近いうちにわかった。村の衆にも手伝ってもらい、レイパーありすが集められた。そして傷つき息も絶え絶えの状態に、外道が襲いかかる。 「でいぶううううう!!!!かわいいいいよおおおおおお!!!!たっぶりがわいがっであげるううううううううう。」 「ゆうう、こないでね。ありすはゆっくりかえってねえええええええええ!!!!!!いやあああああああ、こないでええええ。ぐえええええ、ぎじょぐわるいいいいいいいいいいいいい!!!!おねさああああん、だずげでえええええええええ!!!!!」 おお、凄惨。凄惨。 おぞましいうえに気色悪いことこの上なし。 「いいんですか?あのゆっくり死んじゃいますよ。」 「大丈夫よ。あのゆっくりありすをすっきりさせるつもりも毛頭ないから。まあ見ててよ。」 顔が上気し、愈々達しようとするレイパー。れいむの状態は非常に筆舌しがたくなっている。口に出すと口が腐り落ちそうだ。そして我慢しきれなくなった別のありすもさらに興奮して襲いかかる。 「でいぶううううう!!とかいはのわたしのぺにぺにもいれてあげるよおおおおお!!!こっちのあなもつがわぜでねええええええええ!!!!うひょおおおおおおおぎもぢいいいいいいいい!!!!!」 「ぶぎゃああああああああ!!!!にほんはやめでえええええ!!!さげじゃうううううう」 「もがまんでぎないいいいい!!!ありすのまむまむにも」 だんだんカオスになっていく同種同士でもやり始めた段階で終わっている。 「そろそろいくからねええええ!!!!しっかりうけとめてねえええええええ!!!!」 「いやああああああああ!!!!ずっぎりいやああああああああ!!!!」 「ゆううううううっ、ひでぶ」 何たる外道。否、外道の中の外道。達する寸前で霊夢の拳がレイパーありすを叩き潰す。 間一髪で助かったと思いきや、霊夢が冷たく言い放つ。 「これで終わりじゃないわよ。あんたにはここにいるありす全員の相手してもらうんだから。」 まさに地獄。繰り返される強姦と殺戮。れいむが犯される度に、ありすも死ぬ。 「ごごじゃゆっぐりでぎないよおおおおおおお。おうぢにがえじでええええええ。おうぢがえりだいいいいいいいい」 泣き叫んでもここは鬼畜の巣。責苦は永遠に続く。 「どうもありがとうございました。いやあこのあたりのレイパーありすが減って大助かりです。飼いゆっくりの被害も少なくなりました。」 村の住人からお礼を言われる霊夢。 「いいのよ。私への報酬が約定通り頂けたら幾らでもお手伝いするから。」 「いや、しかし毒を以て毒を制す。ゆっくり対策にはゆっくりが一番ですな。」 「そうね。もっとうまい活用を考えておくわ。」 「ゆっくりしていってね...ゆっくりしていってね...ゆっくり...」 「霊夢さん、そいつ壊れちゃいましたね。」 「いいのよ。風呂焚きの燃料に使うから。」 そう言って霊夢は博麗神社に向かい、里を後にした。 あのゆっくりは今夜の風呂の薪になったと泊まりに来た紫が証言している。 このSSに感想をつける
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前 ※前後編のくせに別物ってくらい話の雰囲気が違います 何か悪いことしてない、むしろ健気なゆっくりが残念なことになります なんかそんなんですが、良ければ読んでやってください ヘルニア(後) 「ゆっぐ・・・えっぐ・・・」 泣きながら家を目指す1匹のまりさ。 そのまりさは変わった事に、通常ゆっくりが行うように飛び跳ねての移動をせず、ずりずりとナメクジの様に這いのめいていた。 只でさえ遅いゆっくりの足、それに拍車をかけての鈍足である。恐怖と苦痛により、まりさの顔には焦りが伺われる。 「ゆぅ・・・・・ぐびゃあぁ!?」 焦れたまりさは一際大きく体を伸ばす。だがその瞬間、まりさの体に電流が走る・・・!! 金属により歪に圧迫された神経が、まりさの意思とは関係なく誤認信号を放つのだ。 「あびゃびゃ・・・がはぁ・・・!!」 そうして白目を剥き出し、全身を強張らせてまりさは悶絶した。 その衝撃は凄まじく、痛みの波が引いた後もしばらくは下半身が麻痺するほどのものであった。 そうやって進んでは止まり、進んでは止まりの牛歩の行軍を続けたまりさが巣に戻る頃には、辺りには夜の戸張が降りていた。 「おかえり、まりさ!きょうは おそかったのね・・・・・どうしたの?」 「ゆ・・・ゆぐ・・・ゆわああああぁぁぁぁぁぁん!!!」 出迎えたありすは、最愛のパートナーの態度に狼狽した。 この山最強を自称するまりさであったが、事実ゆっくり達の中ではかなりのもので、れみりゃ種どころかふらん種にも引けを取らない 程の運動神経と利口さを兼ね備えていた。そんな彼女が無様にもまるで赤子のように泣き叫ぶ光景は、ありすには信じられないもので あった。何とか咽び泣くまりさをなだめすかし、ありすは事の顛末をまりさから聞きだした。力なくポツリポツリと言葉を紡ぐまりさ の姿には、普段の自信に満ち溢れた力強さなど微塵も感じられず、絶え間なくありすの心を締め上げるのだった。 「ゆっくりりかいしたよ!それじゃあまりさ、ゆっくりがまんしてね!!・・・ゆんしょ!ゆんしょ!」 「いぎゅっ!?あびゃっ!?ありす、ゆっくりやめてね!!それいじょうするとしんじゃうよ!!!」 何とかしてありすは鈍く光る鉄板を取り出そうとしたのだが、時すでに遅くそれは完全にまりさの体に組み込まれていた。 ゆんしょゆんしょと引っ張る度にまりさは精一杯の悲鳴をあげる。手の施しようの無いことを知り、2匹は途方にくれるのであった。 「・・・ねぇありす、あしたまりさはゆっくりここをでていくよ。」 「ゆゆ!?いきなりなにいうのおぉぉ!!?いたかったのは わるかったけど あんまりだよおぉぉぉ!!!」 「ゆっくりきいてね!!さっきは いたかったけど、ありすが まりさのことを おもってくれてたことは わかってるんだぜ? まりさは そんなありすのことが だいすきなんだぜ!」 「じゃあなんで でていくなんて いうのおおぉぉ!?」 「ゆぅ・・・まりさは もうまえみたいにとんだりはねたりできないんだぜ・・・。ここにすみつづけるとありすにめいわくかけるんだぜ。 だから、ありすには ほかのゆっくりと けっこんして しあわせになってほしいんだぜ・・・。」 「ゆうう・・・まりざのばが!!あり”ずはまりざじゃな”いどだめなんだよお”おおぉぉぉぉぉ!!!!!」 「ありす・・・・・」 「ありすがんばるから・・・!がんばるからいっしょにゆっくりしようよおぉぉぉ!!!」 眼前で思いの丈を叫ぶパートナー、そんな彼女を見てまりさも耐え切れなくなり、ついには2匹揃って泣き始めてしまった。 数分後、たっぷり涙を流し悲しみを洗いきった2匹は、いいムードに包まれてゆっくりその身を近づけて・・・ 「ゆぎゃあああああ!!!ずっぎりでぎないいいいぃぃぃ!!!!!」 愛を確かめ合おうとしたところ、腰痛によりまりさはすっかり不能になってしまっていた。 そんなまりさだが、ありすは愛想をつかすことなく、朝まで優しく寄り添っていた。 「それじゃいってくるね、まりさ!!」 「ゆっくりいってらっしゃい!!」 翌日から、2匹の生活は一変した。 これまでは運動神経のよいまりさが狩りに出ていたのだが、こうなってしまった以上ありすが狩りに出かける事となった。 一方のまりさは自室に篭りきり、腰の養生に時間を割く毎日となった。ありすが狩りに馴れてないこともあり、以前のように大量の食料が 確保できず、また質のほうも苦い草など散々なものであった。だが2匹は幸せだった。 梅雨 「ゆっくりしーしーするよ、ぺーろぺーろ・・・」 「ゆぅ・・・・・ごめんねぇ・・・・・」 ありすはまりさの下腹部を舐めてやり、排尿行為を行為を促してやる。雨が続き湿度の上がるこの時期、体内に過剰にたまった水分をゆっ くりは尿として排泄し、自身の水分バランスを調節する。成体となったゆっくりは本来自分の意思によって行うことが可能なのだが、腰を 患ったまりさにはそれが不可能であった。そこで定期的に、親が子にしてやるようにありすがまりさの排泄口を舐めてやり、排尿を手伝 ってやる必要があった。長雨の続くいま、外へ出られない日々が続き食料も不足した。看病疲れも合わさって、ありすはひどくやつれて しまった。まりさはそんなパートナーと、ただ負担にしかなれない自分に苦しんだ。 夏 長い雨も終わり、辺りは生命の活気に満たされた。介護の負担の減少と、食料の確保が充分に出来るようになったため、ありすは以前の 気さを取り戻し、それに応えるようまりさの容態も幾分ましになっていった。流石に飛び跳ねることの出来ないものの、リハビリも兼ね て巣の周辺を散歩することも多くなった。もっとも、夏の日差しや熱せられた地面に鉄板が触れるたびに、まるで餡子が焦げ付くような 苦痛に襲われるため、とてもゆっくり出来るようなものではなかったが。 「こんにちは!ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!」」」 ある日、散歩に出かけた2匹はとある一家と出合った。たくさんの子供達に囲まれて楽しそうな母、子供達の方もやさしい母に愛を注が れ毎日が幸福でいっぱいと言わんばかりだ。 「ゆっくりしていってね!あかちゃんたち みんなかわいいね!」 そう言って優しく微笑むありすの目には、どこか淋しそうな光が浮かんでいた。 まりさはそれに気付き、またもや心が痛んだ。 秋 「これでゆっくり ふゆをこせるね!まりさの からだも よくなってきてる しよかったね!」 「そうだね!ふゆがおわって はるになったら あかちゃんつくろうね!」 巣の中でたっぷりの食料に囲まれた2匹はホクホクである。これだけあれば越冬中に尽きることもない。 鉄板が馴染んだのか、まりさの腰も大分良くなっていた。 冬が明けて暖かくなったら子供をたくさんつくろう、そして、今年の分を取り戻すくらい幸せになろう・・・。 そう話す2匹は希望に満ち溢れていた。きたる幸福な未来を思い、自然と笑みがこぼれる。 そんなささやかな幸せ、それは突然の来訪者によって脆くも崩れ去った。 「うー!おいしそうなおまんじゅうだど~♪」 「みんなでなかよく ディナーだど~♪」 「「「れみ、りあ、うー♪」」」 巣の入り口には中を覗き込む3匹のれみりゃの顔があった。 以前のまりさであれば充分撃退できる程度の相手、だが手負いの体にはあまりにも強大な相手であった。 他に出口はなく、今から掘っても間に合わない。万策尽きたか・・・まりさは観念しその身を委ねようとした。 「・・・まりさ、ずっとあいしてた。いままでありすとゆっくりしてくれてありがとう。」 「ありす・・・?」 「こどもはできなかったけど、とってもしあわせだったよ。あたたかくなったら あたらしいおよめさんをみつけてね。」 「さっきからなにいってるの?さっぱりわからゆっぐ!!?」 突如ありすはまりさを巣の奥へと突き飛ばし、自身はれみりゃの待つ出口へと躍り出た。 「ゆぅ・・・う!? ありす、なにしてるの!!?」 ありすは振り向かない。そして、冬篭り用に積んであった資材に激しく体をうちつけた。 「うー?これじゃなかのまんじゅうがたべられないんだどー?」 「でも1こでてきたんだど~♪」 「それもそうだど~♪それじゃみんなでたべるんだど~♪」 駆けつけた入り口は完全に閉ざされており、その向こうからは耳障りなれみりゃの声が聞こえる。 まりさは必死に扉を打ち破ろうとするも、弱った体ではそれは叶わなかった。 「「「いっだだっぎま~すだどぉ~♪」」」 「ぐっ!!?」 くぐもったありすの声が聞こえる、必死に叫びを堪えているのだろう。 「うまうま~♪1個しかないから ゆっくりあじわってたべるんだど~♪」 「おじょうさまは がつがつしないんだど~♪」 「・・・・・!!・・・・・・!?」 ありすにとっては死刑以上の宣告である。それでも必死に悲鳴を噛み殺す、だがもはや限界であった。 「・・・いぎゃああああぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!??? いだい”いいぃぃぃぃぃぃ!!!!!」 「うるさいおまんじゅうなんだどぉ~♪」 「じにだぐないぃ!!じに”だぐな”い”よ”お”お”おおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」 「でぃなーはしずかに たべるもんだど~♪」 「だずげでええぇぇぇ!!!だずげでま”り”ざあああぁぁぁぁ!!!」 「ここには まりさなんていないんだど~♪」 まりさには聞こえていた。 悲痛な声で叫ぶ愛しいありすの絶叫も、耳障りに笑うれみりゃの声も。 その全ての一言一言が、まりさの心を大きく深く切りつけていった。 両の目から一生分とも思える涙を吐き出しながら、全身全霊の体当たりを行うも扉は無情にも開かない。 心も体も擦り切れんばかりになった頃、外はもう静かになっていた。 「う~♪おいしかったんだど~♪」 「おうちかえって おひるねするんだど~♪」 満足したらしいれみりゃ達の羽音が遠ざかっていく。 それを聞き、全てが終わったことを理解した瞬間、まりさの心は砕け散った。 (・・・ねぇ、まりさ。きこえてるかしら?) 何やら聞こえるが意識がはっきりせず、言葉の意味が理解できない。 (わたしはしんじゃったけど、わたしのぶんまでながくいきてしあわせになってね) 聞き覚えのある声だ、いったい誰だっけ? (それじゃあ・・・ゆっくりしていってね!) そうだ・・・そうだった、この声は 「ありす!!」 跳ね起きたまりさは、割れんばかりの声を張り上げる。 だがその声に返すものは何もない。 暗い穴の中、まりさは声が出なくなるまで叫び続けた。 冬 「むーしゃ・・・むーしゃ・・・・・」 穴の中には力なく餌を食むまりさが1匹。 その姿に覇気はなく、生きているのかすら疑わしい。その姿は幽鬼のようであった。 「ごちそうさまでした・・・」 一人呟き食事を終える。まるで誰かに報告をしているようだ。 まりさにとって食事は楽しいものではなく、ただの義務でしかなかった。 最愛のパートナーの最後の言葉、それは生きて欲しいと言う願いであった。 正直なところまりさは生きたくなかった。一刻もはやく彼女の後を追いたい気持ちばかりであった。 だが、それを彼女は喜ばないであろう。命を賭してまでの彼女の願い、それはまりさを縛り続けた。 ああ、今日も寒さが染みるなぁ・・・そう考えながら、まりさは冷えて疼く腰をかばいながら床へとついた。 冬が明ければ少しはましになるか、そう考え眠るまりさの夢は今日も変わらない 夢の中でありすが告げる、ゆっくり生きてと・・・ 春の訪れはまだ先だ。 やっと終われ 作者・ムクドリ( ゚д゚ )の人 このSSに感想を付ける
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チルノフじゃないゆっくりチルノが家に現れた。 ゆっくりチルノの周りにはプラモデルだったものの残骸が散らばっていた。 「あたいってばさいきょーね!!」 唯一生き残っていた1/100サイズのガンダムも体当たりで壊された。 「ちょ、てめぇ!」 結構高かったうえに組み立てに苦労したのだ。ゆっくり如きに壊されてムカッとした。 ゆっくりチルノをむんずと捕まえる。ひんやり冷たい。 「はなしてよ! あたいさいきょうだもん!ひどい目みるよ!!」 あー、うるさい。無視してがぶり付いた。 「いたい! さいきょーなのにいたいよー!!!」 「まずい・・・ほとんど皮じゃねーか」 ゆっくりチルノは体の中央におまけ程度に具が入っていた。他は皮だ。やはり馬鹿だと中身が少ないのか? ちなみに具は桜餅だった。頭が春だからか。 これは食べてもおいしくない。なので今度捕まえた時はアイス枕にしてやろうと思う。
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[登場人物] 長:片目のゆっくり。千匹を超えるゆっくりの群れの長。黒い。 参謀:パチュリー種。ゆっくりの群れの参謀。太い。 参謀補佐:キメェマル種。ゆっくりの群れの参謀補佐。キモい。 レイム マリサ 群れのゆっくりたち 村長 村人A 村人B 村人たち 語り──罪のあるなしに関わらず、理由にあるなしに関わらず、 人間かゆっくりかその他諸々が、死んだり死なれたり、 殺したり殺されたりするかもしれない。そんな、そういう、 そういったお話。どこにでもあるありふれたお話。 幕が上がる。舞台中央に粗末な箱がおいてある。遠くで鳥の鳴き 交わす声がする。森の近くである。 舞台上手からマリサ種が通りかかる。逆さにした帽子を器用に頭に載 せている。中には木の実や茸などの収穫物。採集の帰りのようだ。鼻歌 をしている様子から、たいそうな成果であったことがうかがえる。 上機嫌のために箱を大して気に留めず、チラリと視線を走らせて、 そのまま舞台袖へと行きかけ……視線を再び箱へと戻す。 首をかしげてしばし見つめるが、また前方へ向き直り帰路につく。 と思いきや、湧き出した好奇心に負け、帽子を置いて箱に走り寄る。 箱を開け、中をのぞき込む。 マリサ──一体これは何なのぜ? ゆぅ? ゆ、ゆゆっ?! マリサ、驚きの声を上げようとして、慌てて口をお下げで押さえる。 キョロキョロと辺りを見回し、舞台袖へと駆けていく。自分の帽子を 置き忘れるほど、気が動転している。 そこへ偶然現れたレイム。二匹は衝突する。 マリサ・レイム──ゆわっ! レイム──な、何、そんなに急いで? 全然ゆっくりしてないよ。 ゆっくりにあるまじき行為だね。 マリサ──(語気を荒らげて、しかし、声を潜めて)そんなことより 大変なのぜ、レイム! レイム──「そんなこと」なんて簡単に片付けないでね! マリサが ゆっくりしてなかったせいで、レイムの玉のようなお肌が 傷物にされるとこだったんだよ。 マリサ──いいから、ちょっと見るのぜ。見るのぜ。 レイム──そんな暇ないよ。れいむはこれからアリスとお忍びデート なんだよ。みんなに秘密のラブラブちゅっちゅ。ゆぷぷっ。 マリサ──既に秘密じゃなくなってるのぜ。とにかく! 見てみるのぜ。 重大事件なのぜっ。(とレイムを箱の方へ引っ張っていく) レイム──重大なはずないよ。レイムとアリスの愛の叙事詩よりもね。 レイム、マリサに促されて渋々と箱の中をのぞき込む。 中のものを認識し、コロンと後ろに倒れる。起き上がって声を上げ ようとする口を、マリサに押さえられる。マリサ、「しーしー」と静粛 を求めるジェスチャー。 レイム──(マリサに口を開放されて)なっ(大きな声だったので、 再び口を押さえられる) マリサ──起こしたら、まずいのぜ。 レイム──な、なんなの、あれ。ゆっくりできるけど、ゆっくりできないよ。 マリサ──マリサたちじゃ判断つかないのぜ。偉い人を呼んでくるのぜ。 レイム──偉い人? マリサ──取締役のゆっくり。誰かいないのぜ? レイム──(遠くを見て、気づく)ゆっ? マリサ──ゆっ? レイム──あっち、見て、マリサ。 マリサ──(指し示す方を向く)ゆっ、あれは。 レイム──間違いないよ。さんっ(呼びかけようとしてマリサに口を 押さえられる。静粛を求めるジェスチャーに、同じ動作を して同意を示す) 二匹──(小さな声で)さんっぼー。 レイムとマリサ、遠くにいる者の反応を見るが、気づくはずもない。 レイム──だめっ。 マリサ──あんな遠くで、こんな小さな声じゃ当たり前のぜ。 レイム──呼びに行こうっ。 二匹、小さな声で「参謀、参謀」と連呼しながら下手へ退場。 後には箱が残される。種々の鳥の声が鳴き交わされている。 上手よりこっそりと顔を出すゆっくりがいる。キメェマル種。群れの 参謀補佐である。 誰もいなくなったのを確認すると、サササッと箱に近寄り、のぞき込む。 参謀補佐──おお。これは、これは。美味しそうですね。 参謀補佐、左右に揺れたり、箱の周りを一回転したりとせわしない。 やがて向こうからの気配を察し、上手へ消える。 入れ替わるように下手からレイム・マリサ・参謀が現れる。 レイム──こっち、こっち。 マリサ──とにかく見てほしいのぜ。 参謀──目上の相手にはちゃんと敬語を使わないといけないわ、マリサ。 せめて「です・ます」を付けないと。 マリサ──とにかく見てほしいんですぜ。 参謀──……まあ、いいけれど。それにしてもさっきから何があったか 説明しないのはよくないわね。 レイム──箱があったんだよ。です。 マリサ──中にすごいものがあったのぜ。ます。 参謀──後で教育が必要ね。言葉の使い方も説明の仕方も。 マリサ──たくさん説明するより一回見た方がいいのぜ。 レイム──びっくりしていってね! 参謀──まったくもったいぶって。そんなに驚くようなことなのかしら。 参謀、箱の中をのぞき込む。そこにあるものを認識し、コロンと後ろ に倒れる。ぶつかりそうになった二匹は慌てて飛び退く。 参謀──な、なにあれ。 マリサ──やっぱり驚いたのぜ。 レイム──びっくりするよねー。 参謀──生きてる、のよね? マリサとレイム、コクコクとうなずく。参謀、箱の中を再びのぞき込む。 じっと見つめて分析。 参謀──血色は悪くない。呼吸も規則的。少し衰弱しているみたいだけど、 概ね健康ね。 レイム──元気? 参謀──どうかしら。(髪の毛で中のそれを突っつく) 火の付いたように赤ん坊の泣き声が響きわたる。三匹、慌てる。 レイム──あ、赤ちゃん泣いちゃったよ! マリサ──ゆっくりと同じなのぜ! うるさいのぜ! 参謀──ど、どうしよう。二人はあやしたりできないの? レイム──ゆっくりの赤ちゃんはしたことあるけど! マリサ──人間の赤ちゃんは無理なのぜ! 赤ん坊の泣き声はますます盛大になる。三匹はあたふたと箱の周りで 右往左往する。 参謀、意を決して箱の中へ顔を向ける。 参謀──(髪の房で顔を隠して)いないいない、バァーっ! 赤ん坊の泣き声、止まる。三匹、固唾を呑んで見守る。 赤ん坊が「ヒッ」と一瞬声を上げるのに、三匹はビクつくが、 その後「キャハハハ」と朗らかに笑う赤ん坊に、安堵の息をつく。 レイム──上手くいったね。 マリサ──上手くいったのぜ。 参謀──良かったわ。 レイム──ゆふふ、笑ってるよ。かわいいね。 レイムが赤ん坊に触れようとすると、「だぅだぅ」とやや怒った様子 の声が。レイム、慌てて離れる。 マリサ──威かくされてるのぜ。 参謀がのぞき込むと「キャハハ」と笑い声が上がる。 レイム──参謀のことが好きみたいだね。 マリサ──懐かれてるのぜ。お母さんだと思われてるのかも。 参謀──あら、そんなこと。 レイム──きっとおっきくて丸っこいママだったんだね! 参謀──(剣呑な雰囲気で)……どういうことかしら。 レイム──(参謀の怒気に気づかず)そのままだよ。ふくよかで、 ぽっちゃりした、存在感のある、ぶっちゃけおデブな お母さんだったんだよ。きっと参謀みたいな……(ようやく 殺気を察知する)ゆ、ゆゆっ?! 参謀──レ~イ~ム~。 レイム──レ、レイム、用事思い出したよ。さ、さ、さよならっ! 参謀──待ちなさいっ。 下手へ逃げるレイムを追いかける参謀。残されたマリサは下手と 箱を交互に見るも、二匹を追って退場していく。 誰もいなくなったのを見計らい、上手から参謀補佐が顔を出す。 入念にキョロキョロと視線を巡らせる。「行ったか?」の声に「はい」 と返事をする。 上手から、参謀補佐と長が登場。箱へと近づく。 長──これがそうか。 参謀補佐──ええ。見てください。 二匹、箱の中をのぞき込む。 「だーだー」と赤ん坊が楽しそうに声を上げる。 長──ふむ、参謀補佐の言った通りだな。 参謀補佐──でしょう。 長──とても美味しそうだ。 参謀補佐──はい。これだけ状態のいいものはありませんよ。 長──人間の赤ん坊を食べる機会などほとんどないからなあ。 まさに僥倖。天に感謝せねばなるまい。 参謀補佐──人間を食べること自体は珍しくはありませんけど、 ほとんどが成人ですからね。 長──肉の臭みや柔らかさを考えた場合、幼年と壮年では雲泥の差がある。 羊肉と同じだな。 参謀補佐──ええ。おお旨い旨い、となること間違い無しです。 長の舌を満足させることができそうで、お呼びしたかいが ありました。 長──口実だろう? 参謀補佐──え? 長──俺の舌を満足させるというのはさ。 参謀補佐──いやあ、まさかそんな…………やっぱりバレましたか。 長──そんな殊勝なキャラだったら、参謀補佐には据えてないさ。 常に薄汚い策謀を巡らしてくれないとな。そう、例えば、参謀に ごちそうを横取りされないように、より上の立場の黒ん坊を巻き 込むとかな。 参謀補佐──いやははは、参謀は見てのとおり、色気より食い気です からね。二人で山分けすると指先一本ほどしかもらえない かもしれませんし。それなら平等に三等分するのがいいか と考えまして。 長──(笑う) 参謀補佐──(笑う) 長──ネタとしては面白い。が、実際は笑えない事態になるかもな。 参謀補佐、首をかしげて言葉の真意を聞こうとするが、赤ん坊の むずがる声に長が顔を向けたので、そちらにつられる。 長──おやおや、放っておくわけにはいかないか。参謀補佐、頼む。 参謀補佐──私があやすんですか? 長──俺の魅力は幼女にはわからないだろうしな。 参謀補佐──その件に関してのコメントは控えさせてもらいますが…… まあ、子供をあやすことについてはお任せください。 参謀補佐、箱に向かって身構える。自信をうかがわせる笑み。 参謀補佐──(顔を伏せて)いないいない……おお、怖い怖い(きめぇ 丸シェイク)。 火の付いたように泣き出す赤ん坊。大音響が辺りに満ちる。 参謀補佐──あ、あれ。おかしいですね。子供たちには人気だったの ですよ、肝試し大会で。 長──その特長がいかんなく発揮されたな。 参謀補佐、慌てふためいて何とかしようとするが、どうにもできない。 やがて騒ぎを聞きつけたのか、参謀・レイム・マリサが戻ってくる。 レイム──あっ、長だ。 マリサ──参謀補佐もいるのぜ。 参謀──二人とも、何をやってるんですか! 長──いや、大したことじゃない。参謀補佐のキモくてウザい魅力を たーんと味わってもらおうと思ってな。 参謀補佐──幼女にはわからなかったようですがねぇ。おお、無理解 無理解。 参謀──ふざけたこと言わないでください! まったく、トラウマに なったらどうするんですか。(赤ん坊をあやしにいく) 参謀補佐──そんな先のこと気にしてどうするんですかね。 参謀、赤ん坊を髪の房で撫でながら、「よしよし」と笑顔を向ける。 ほどなくして、赤ん坊の泣き声は止み、笑い声が上がる。 長──見事な扱いだ。 レイム──やっぱりお母さんみたいだね。 参謀──それじゃあお湯を用意して身体を洗いましょうか。 参謀補佐──下ごしらえですか。 参謀──え? 参謀補佐──え? 参謀──ああ、それから傷があったりしたら、薬草も必要ね。 参謀補佐──香味野菜で風味を付けるのですね。 参謀──え? 参謀補佐──え? 参謀──とにかく慎重に、丁重にね。 参謀補佐──ん? ええと? あれ? まさか、飼う気なんですか? 参謀──飼うって、そんな言い方はないでしょう。保護するだけよ。 参謀補佐、うろたえて長のの方を見る。長、「言ったとおりだろう」 とでもいうように皮肉な笑みを浮かべる。 マリサ──長も参謀補佐もどうかしたのかぜ。 長──出荷するはずの豚がペットになってしまって動揺しているのさ。 参謀、ジロリと長を見る。長、身をすくめる。 参謀──それから、この子、多分お腹もすいているだろうから、ミマ種 にお願いして練乳をもらってきた方がいいわね。 長──そうだな、腹も減ったし、クリームの他に塩と酢も用意しようか。 参謀──おしゃぶりとか必要かしら。それともおもちゃとか、子守唄? 長──よく加熱した油とか入り用かな。あるいは刺身とか、ユッケ? 参謀、キッと長をにらむ。長、即座に飛び退く。 参謀──あら、どうして距離を取るんです? 私から。 長──いや、一定以上離れてないと極めて危険だと、本能が告げるんだ。 参謀──そうですか。 長──そうなんだ。 参謀──うふふ。 長──ははは。 参謀はにじり寄り、長は後ろに下がる。どちらからともなく駆け出し、 そのまま舞台上手へと退場。 参謀補佐──あー……。 レイム──行っちゃったねー。 マリサ──どうするのぜ、これ(赤ん坊を見る)。 参謀補佐──とりあえずは参謀の言われた通りにしましょう。 マリサ──参謀補佐はそれでいいのぜ? 参謀補佐──構いませんよ。長には考えがあるようですし。ああ、それと。 レイム──ゆ? 参謀補佐──先ほどから二人は敬語を使わなすぎです。罰が付きますよ。 レイム・マリサ──ゆがーん! 参謀補佐──さあさ、赤ん坊を運んでください。それからバシバシ働い てもらいますからね。それら労役が罰となります。 レイム──た、ただ働きっ?! 参謀補佐──当然です。 マリサ──トホホのぜ。 レイム──ゆぅん、とんだものを見つけちゃったよ。 レイムとマリサ、箱を運んで参謀補佐の後をついていく。三匹、舞台 下手へと退場。 やや間をおいて、長と参謀が舞台上手から戻ってくる。軽快に動く長 に対して、参謀は息を切らしている。 参謀──ゼェ……ハァ……。 長──頭脳労働タイプとはいえ、もう少しは体力の欲しいところだな。 参謀──ハァ、これでも、ハァ、パチュリー種の、ハァ、中では… 長──「これでもパチュリー種の中では体力はあるほうです」か。 それで良しとするわけにはいかんよ。お前さんは群れを治める 立場なのだからな。 参謀──ハァ、ハァ、そ、そうですか。 長──そうさ。いざというときには不眠不休で群れ全体の動きを把握し、 指示を出さなくてはならない。自ら戦う事態だってあるだろう。 参謀──それは、まあそうですけれど。 長──自分の立場、わかっているかい? 参謀──ええ。 長──嘘をつけ。 参謀、息を呑む。長、隻眼を細めて参謀を見つめる。 長──飼育、保護、育児。呼び方は何でも構わないが、お前さんはどう いう意図で、あの幼児を扱おうとしているのかな。 参謀──私は、その、 長──たくさんのゆっくりが死んだなあ。特に幼齢の。特にパチュリー 種の。救えなくて後悔している。反省している。悲しんでいる。 参謀、言葉を返そうとして返せない。口を意味なく開閉するだけ。 長──人間の幼児を救うことで、自分の気持ちを救おうというのかな? それでは、その結果は如何なるものになるのか見えているかい? 死んだゆっくりの死因は食料が足りないことからくる栄養失調。 あの幼児が捨てられた理由も食糧難からだろう。事情はどこも 同じだからな。 参謀──余裕は、ない…… 長──ああ、手間も食料もちょっとでも割けば、それだけゆっくりも 死ぬという理屈さ。お前さんは自分を救うために、より自分を 追い詰める行動をすることになるな。火あぶりになっている自分 を助けるために必死で息を吹きかけて、より火勢を強めるような ものだ。 長、軽く笑う。参謀、顔を伏せる。 長──自分一人だけが不利益を被るならまだいいが、群れ全体が不利益 になることをやらかされたのではたまらないな。いやはや、全く。 私情を公務に絡めるのを一概に悪いとは言わないがね、群れの 方針に反するのは勘弁願いたい。統制が取れなくなる。それも 参謀がやらかしてしまうのはね。 長、顔を伏せたままの参謀を見つめる。沈黙。 長、その場から離れてゆく。背中越しに参謀に話しかける。 長──わかっているかい? いや、どうあれわかってもらうよ。赤ん坊 の処遇、お前さんが決定してくれ。それがお前さんの課題になる。 いや、罰かな。 長、舞台下手へと去る。舞台が暗くなり、残された参謀に光が当てら れ、やがて参謀が静かに顔を上げるところで暗転。 暗転の中、ゆっくりたちの足音が聞こえてくる。 溶明。 舞台中央、赤ん坊の収められた箱を、マリサとレイムが頭に載せて運 んでいる。 レイム──(息を切らしながら)ゆふぅ、ゆふぅ。 マリサ──(息を切らしながら)ぜぇ、なのぜぇ。 レイム──あ、あとどれくらいなのぉ? マリサ──さ、さっきの山を越えたから、多分もう少し掛かるのぜ。 レイム──たっ大変だよぉ。マリサ、ちゃんと持ってるぅ? マリサ──持ってるのぜ。レイムこそちゃんと合せるのぜ。 箱が揺れ、二匹は慌てる。何とか落ち着き、再び歩を進める。 レイム──ゆぅ、中身がキノコとか果物だったら良かったのに。この倍 くらいの重さでもいいよ。さっきのイノシシでもね。 マリサ──ホントのぜ。気を遣うから疲れるのぜ。 レイム──揺らしちゃダメだよ、マリサ。 マリサ──モチのロンのぜ。万一泣かせでもしたら、太っちょママさん から折檻のぜ。 上手から現れる参謀。レイムとマリサは気づかず、談笑を続ける。 レイム──怒りの「ぼでぇーぷれす」が炸裂するかもね。 マリサ──母の愛は重いのぜ。 レイム──ペタンコになっちゃうよ。 マリサ──甘いのぜ。あの大きさと重さだったら、ペタンコどころか、 跡形も残らないのぜ。 レイム──おお、こわいこわい。 マリサ──こわいこわいのぜ。 二匹、笑う。 参謀──(二匹の近くで)何が怖いのかしら。 レイムとマリサ、突然の参謀の声に驚く。箱を落としそうになるのを 見て、参謀も驚く。三匹して箱を支え、事なきを得る。 レイム──ゆふぅ~。 マリサ──間一髪のぜ。 参謀──(胸をなでおろす) レイム──まったく参謀は、脅かしっこ無しだよ! 参謀──あなたたちが原因でしょう。気持ちが浮ついてるわよ。 マリサ──はい、のぜ。 レイム──ごめんなさい。 参謀──自分たちの任務、理解しているのかしら。 レイム──それはもちろんだよ! みんなで遠足! 参謀──集団で遠征よ。訓練なの。探索も兼ねてるわね。大した理由な く群れが動くはずないでしょ。 マリサ──物資の円滑な運搬も理由の一つのぜ。 参謀──そうよ。あなたはわかっているみたいね。 マリサ──でも、さすがに疲れたのぜ。運ぶの、さっき仕留めたイノシ シじゃダメかなのぜ? 参謀──ダメよ。あなたたちは「それ」の専属。今回の遠征がなければ 運ばなくって良かったものだけど。 マリサ──トホホ。 レイム──それにしてもイノシシさんが襲ってくるなんてね。 参謀──よほどお腹が空いていたみたいね。横から最後尾のゆっくりを 狙ってきたのは驚いたわ。 レイム──返り討ちにしたけどね。逆にこっちの食料が増えることにな ったよ。 参謀──ヨダレ、出ているわよ。 レイム──ゆぅっ!(ヨダレをふく)仕方ないよ! だってお腹すいた んだもの。(箱を見て)これがお弁当だったらなあ。 参謀──指の先さえかじらないようにね。長の意向は「生きる価値の無 い人間以外はできるだけ食べない」だから。 マリサ──うーっ、マリサも腹減ってきたのぜぇ。イノシシ食いたいのぜぇ。 レイム──イノシシさーん、早くレイムのお腹に飛び込んで来てね! 早くていいよ! 舞台上手から巨大なイノシシの頭がヌゥと現れる。 レイム──ゆぎゃぁああああ! マリサ──な、何なのぜ?! 参謀──(口をあんぐり開けている) イノシシの首を棒にくくって掲げた参謀補佐が登場。 参謀補佐──失礼ですねえ。そんなにキモいですか、私の顔。 参謀──あなただったの。何やってるの? 参謀補佐──さっきイノシシの血抜きが終わったんですよ。で、首の の方は先頭に持っていけと、長が。 マリサ──長が? レイム──何で? 参謀補佐──さあ。参謀は見当つきますか? 参謀──いいえ、あんまり。 参謀補佐──そうですか。まあ命令ですから、ともかくも先頭に行って きます。では失礼。おお、重い重い。 参謀補佐、舞台下手へと去る。 レイム──ゆぅう、びっくりしたよ。突然生首が出てくるんだもん。 マリサ──いや、レイムも生首なのぜ。 レイム──イノシシさんは別腹なんだよ! 参謀──別腹……? 参謀補佐──あ、言い忘れてました。 参謀補佐、唐突に舞台下手から再登場。やはりイノシシの首と一緒に 現れたので、三匹は驚きの声を上げる。 参謀補佐──赤ん坊、列の最後尾より更に後ろに控えさせといてください。 参謀──え? 参謀補佐──長からの命令、その二です。いえ、これからちょっと騒が しくなるのでね、赤ん坊が泣いてはいけませんから。では、 改めまして、失礼。 参謀補佐、舞台下手へと退場。三匹、顔を見合わせる。暗転。 暗闇の中、ザワザワと交わされる声。 スポットを当てられた参謀補佐、舞台上手から登場。あちこちに視線 を巡らせながら中央へ向かって移動していく。 参謀補佐──ふむふむ。なるほど、面白い。四方を険しい山々で隔絶さ れた集落は特有の風習なり何なりがあると言いますが、そ ういった雰囲気にあふれてますね。見れば見るほど面白い。 これは来たかいがありました。 参謀補佐、あちこちに向けていた視線を前に固定。 参謀補佐──あ、どうもどうも。所要ありまして、遅れてすみません。 参謀補佐のキメェマルです。 溶明。村の中。参謀と参謀補佐、箱に寄り添うレイムとマリサがいる。 向かい合って、村長他、村人たち。 村人A──いやあ、ようこそおいでくださいました、このようなヘンピ な村に。何のおもてなしもできませんが、ゆっくりしていっ てください。 参謀補佐──ええ、ありがとうございます、村長さん。 参謀──(村人Aの隣を示し)村長はこちらの方。 参謀補佐─あ、すみません。ずいぶんとお若いので。 村長──みんな若いですけどね。 一同笑い。 村長──(キメェマルを見て)それで、この方が群れを治めて? 参謀──いえ、群れの長は別にいて……参謀補佐、長は? 参謀補佐──ちょっと花摘みに。 レイム──この辺りにお花畑があるの? レイムも行きたいよ! マリサ──タンポポとかチューリップとか美味しいのぜ! 参謀──どちらもこの季節、咲いてないわよ。それにそういうこと じゃなくてね…… 参謀補佐──便所です。うんうんです。 参謀──もうちょっとデリカシー! あからさま過ぎるでしょ! マリサ──ブリブリ、モリモリのぜ。 レイム──おお、臭い臭い。 参謀──あなたたちも乗らない! 村長──あははは、にぎやかでよろしいことですね。 参謀──すみません。すぐ出ていきますから。 村人A──遠慮は要りませんよ。休まれていかれては? 参謀──訓練の途中に立ち寄っただけですから。それにあれだけの数 がぞろぞろ入ってきたらやはり迷惑でしょう。 村人B──いえいえ、そんなことは。 参謀──それに先ほど狩りをして気が立ってますし。 村長──ああ、あのイノシシですか。立派なものですねえ。あんな巨大 な獣とやりあって無事だったんですか? 参謀補佐──負傷者はゼロですね。 村長──ほほぉ。 参謀補佐──楽々とはいきませんでしたけど。 村長──ああ、それで気が立っている。さっきの歌も? 参謀補佐──凱歌のことでしょうか。やかましくてすみません。テンシ ョン上がりまくってるのですよ。 村人A──いやあ、久しぶりに威勢のいいのを聞けて、活気が出ます。 参謀──そう言っていただけるとありがたいです。ところで例の件なの ですが。(箱を見る) 村長──ええ、それはもちろんお任せください。皆様の温かい気持ちを 十二分に理解した上で、丁重に扱わせていただきます。 参謀──よろしくおねがいします。では、私たちはこれで帰ります。 村長──はい、道中お気をつけください。 参謀──ありがとうございます。 参謀補佐──もう来ることはないとは思いますが、いつでも気にかけて ますよ。 村人B──はい。ではごきげんよう。 レイム──じゃーねー。赤ちゃんにも、じゃーねー。(と箱に向かって 投げキッス) マリサ──(背を向けて)さよならは言わないのぜ。(振り向いて)グ ッバイなのぜ。 村人A──さようならー。 箱を残し、参謀たちが舞台上手へと退場。 村人たち、相手が立ち去るのを見届けてから箱に駆け寄る。中をのぞ く目の光は、異様な輝き。 暗転。 暗闇の中、鳥の泣き交わす声が次第に聞こえてくる。 舞台中央にサス、その下で長と参謀補佐が話をしている。 参謀補佐──ところで、何故に立会いの場に来られなかったので? 長──適当な場所が見つからなくてね。 参謀補佐──花摘みの? 長──花摘みの。いやあ、催しながら探すのは苦労したよ。 参謀補佐──そこらでしてくれば良かったのでは。 長──乙女に対し、それはないだろう。群れの代表としての品位も問われる。 参謀補佐──はあ、品位、ですか。 長──何か言いたそうだな。まさか俺には品位の欠片もないとか? 参謀補佐──いえ、あえて何も言いませんが。ところで『悪魔の証明』 って知ってます? 長──酷い言われようだ。 参謀補佐──で。 長──ん。 参謀補佐──実際のところは何をしておられたので? 長──村の中を探索させてもらってた。 参謀補佐──あのまま一人で行ってしまわれたのですか。ずるいです ねえ。次は私も誘っていただけますか。 長──単独の方が都合良くてな。今回は土産話で勘弁してくれ。 参謀補佐──面白いものが見つかりましたか。 長──うん。牛舎を覗いてきたんだが、ゆっくりの皮があった。きれい にはぎ取られていたよ。 参謀補佐──おお、怖い怖い。私たちも食べられていたかもしれませんねえ。 長──それを防ぐための示威行為さ。あれだけ物々しくやれば、うかつ に手は出せないだろう。こちとら曲がりなりにも妖怪だしな。 参謀補佐──わざとらしいくらいに有効的な態度を見せていましたね。 他には何を見つけましたか。 長──めぼしい物はそれくらいだな。 参謀補佐──それだけですか。 長──事物は一つでも、見方によってはいくらでも深く、面白くなるさ。 お前さんはあの村に何を見た? 参謀補佐──村長を見間違えてしまいました。 長──見間違えたか。……よく見ているな。 参謀補佐──ええ、皆さんお若く、そして似たようなお顔でした。 長──つまりは。 参謀補佐──近親婚がかなり深刻ですね。そりゃ早死にもしますよ。 血が濃すぎるんです。 長──クローン並みに同じ造形にもなるしな。 参謀補佐──けれど、赤ん坊は重宝されるでしょうね。新しい血です。 村の延命には欠かせない存在となるのですから。ただ、複 数相手の性交を強制される可能性はあるのですけど。 長──その可能性はあるな。別の可能性も考えられるが。 参謀補佐──平穏無事、幸福満点な人生ですか? 長──心にも無いことをスラスラ言うのは感心しないな。 参謀補佐──おお、非礼、非礼。それは長の特権でしたね。 長──そういうことだ。で、話を戻すがな、先ほど述べたゆっくりの皮、 参謀補佐──何です? 長──内側にべっとりと人間の血がついていた。既に黒く固まっていたが。 参謀補佐、意味を推し量るように怪訝な顔をするが、やがてあることに思い当たり、目を見開く。 参謀補佐──まさか。 長──何だと思う。 参謀補佐──『牛の首』の飢饉バージョン。 長──ああ、恐らくそうだ。 参謀補佐──参りましたね。しかし、そうだとしたら、赤ん坊がやがて 祭りの中心となったとしたら、 長──村人たちの腹の足しになるだろうな。十分ありうることだろう、 なにせ誰しもがお腹と背中をくっつけてる状態だ。 参謀補佐──我々が饅頭の群れとして襲われることは警戒していました が、これはなんともはや…… 長──ま、いずれにせよ俺たちの手を離れたんだ。どうにもならんし、 どうでもいいさ。 参謀補佐──参謀は、 長──うん? 参謀補佐──参謀は知っているのでしょうか。もしくは感づいて? それとも何も、 長──理解しているさ。 長の言葉と同時に、舞台上手側に新たなサス。その下に参謀。遠くを 見ている。 長──していないはずがない。俺の下で働き、お前さんの上に立ってい る彼女だぞ。ナマナカな目なぞ持っとらんよ。今話したこと程度 は、他の材料からでも察知しきってるさ。 参謀補佐──それでいながらあの態度を……そんな、本当に? 長──お前さんと同じでとぼけてるのさ。知った上で知らない態度を取 っている。大したポーカーフェイスだよ。無論、そうでもなけれ ば、参謀は務まらないとも言えるが。 参謀補佐──因果な立場ですねぇ。 長──他者の人生に気を遣えるほど、こちらに余裕はない。割り切るし かないさ。 参謀補佐──参謀は割り切りましたか。 長──表面だけでなく、心の奥においてまで、か? さあな。しかし、 最後には必ず割り切るさ。そうしなければいけないことは理解 しているんだ、参謀という立場にふさわしくな。 参謀補佐──(間)因果な立場ですねぇ。 長──ま、ともかく、今は仕留めたイノシシに舌鼓を打とう。久しぶり のごちそうだ。参謀補佐も楽しみだろう。 参謀補佐──中身、イノシシのままでしょうね。 長──保証はしかねるな。 長と参謀補佐が笑い合う中、ゆっくりと二匹に当たるサスが消えてゆく。 参謀、遠くを見つめている。やがて、静かに正面に向き直る。 ──幕── 黒ゆっくり9(了) 過去作 黒ゆっくり1 fuku2894.txt 黒ゆっくり2 fuku3225.txt 黒ゆっくり3 fuku4178.txt 黒ゆっくり4 fuku4344.txt 黒ゆっくり5 fuku5348.txt(改訂版 fuku5661.txt)(改々訂版 74.txt・yy0248.txt・8.txt) うやむや有象無象 fuku5493.txt 黒ゆっくり6 fuku5662.txt 樽の中のれいむ fuku6569.txt 都市の一角で fuku6886.txt 黒ゆっくり7 75.txt・yy0249.txt・10.txt 黒ゆっくり7注解? 76.txt・yy0250.txt・11.txt われときて anko792 空気嫁(がすわいふ) slowslow539.txt 空気嫁(がすわいふつう゛ぁい) slowslow562.txt 逝久璃 anko928 かつて一つの群れだったゆっくり達が2つに分かれ、反目しあう話 27.txt 爆発 28.txt 昔、お話、昔の話 anko1144 超餡子脳 ~序章にして終章~ anko1163 ファイアボール第X話「隔離」 33.txt 空気嫁3(がすわいふどらい) slowslow589.txt 空気嫁4(がすわいふふぃーあ) slowslow623.txt 透明な箱 48.txt 厨二病の俺がゆうかにゃんの群れをプロレス技で虐殺する anko2117 とりあえず なにはともあれ ゆうかにゃんぺろぺろ anko2178 酒と何かと男と女(ゆうかにゃん) anko2273 けっきょくやっきょく大冒険 anko2307 裏島太郎 60.txt アイソーポス物語 anko2675 空気嫁5(がすわいふふゅんふ) slowslow736.txt 黒ゆっくり867.txt ゆっくりアメジョ anko3390 ゆっくりアメジョ2 anko3399 ゆっくりアメジョ3 anko3437 ゆっくりアメジョ4 anko3494 ゆメジョ 69.txt ふたば系ゆっくりいじめ 260 油を使ってゆっくりを燃やすテーマで一本(*お題を与えられて一時間で書いたもの)
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※これはfuku1783 ゆっくり腹話術(前)の続きになります 子れいむと親れいむを失い、残り四匹となったゆっくり一家の後を追う。 親れいむが人間に連れ去られたショックはあるものの、ゆっくり一家にあるのは悲壮感ばかりではなかった。 残ったものが死んでいったものたちの分までゆっくりしよう、という思いなのだろう。 「ゆぅ、おにゃかちゅいたね…………」 ポツリ、と子れいむが呟いた。 「「ゆぅ……」」 その言葉に賛同するように声を漏らす二匹の子まりさ達。 このゆっくり一家は食べ物を求めて人里にやってきたが、狙った食べ物にはことごとくありつけなかった上に死ぬかもしれない思いまでしている。 空腹は既にかなりのものになっていることだろう。 腹を空かせる我が子の姿を直視できないのか、なんでもいいから食べ物を探そうとしたのか、親まりさは視線をキョロキョロと辺りに飛ばす。 すると、 「お~い、ノブナガ~。メシだぞ~」 近くの民家から一人の老人が皿を持って外へ出てきた。 どうやら飼っている犬にエサを与えに来たようだ。 老人が犬小屋の前にエサを盛った皿を置くと、バネ仕掛けのおもちゃのように勢いよく一匹の柴犬が犬小屋から飛び出してきた。 ガツガツと勢いよく食べる飼い犬の姿を満足そうに眺めた後、老人は家の中へと戻っていった。 「「「……………」」」 視線をゆっくり達へ戻すと、案の定というか子ゆっくり達は羨ましそうに犬のエサを見つめ、口の端からはだら~、とよだれまで出ていた。 親まりさも私と同じくその姿を見たのか、 「ゆっ、まりさにまかせてね。いぬさんからごはんをもらってくるよ!」 そう子ゆっくり達に言い残してすぐさまその場を駆け(跳ね)だした。 本来は人里の美味しい食べ物を狙いにきたのだろうが、犬のエサまで狙うとは。 余程腹を空かせていたのだろう。 「ゆっ、おとうしゃんがんばっちぇね!」 「むのうなおかあしゃんとはちがうもんね!」 「いぬしゃんなんかぶったおちちゃえ!」 親まりさの背後からは子れいむや子まりさの声援。 その声援を受け親まりさは犬のもとへ向かう速度を更に加速させると、そのままの勢いで食事中の犬のどてっぱらに体当たりを仕掛けた。 「ゆぉぉぉぉぉぉ!!」 「キャウンッ!?」 突然のことに思わずよろめき、その場から退く犬。 それを自分の勝利と思ったのか、親まりさは子ゆっくり達に「みんな~、おいで~。ごはんだよ~」と呼びかけていた。 「やっちゃー、さすがおとうしゃん!」 「おなかちゅいたよ~」 すぐさま親まりさの元へ結集する子ゆっくり達。 そしてゆっくり一家は犬のエサが盛られた皿に一斉に殺到した。 「「「む~しゃむ~しゃ、ちあわせ~」」」 犬のエサといえど野生のゆっくりの常の食事に比べれば豪勢だ。 子ゆっくり達の幸せそうな顔を、子の幸せは我が子の幸せだという顔で見つめる親まりさだったが、自分も腹を満たさねばと皿のエサを食べようとするが 「バウッ!!」 犬の鳴き声に驚き飛び上がった。 「ゆっ、ゆっ!? び、びっくりさせないでね! これはまりさたちのごはんなんだからいぬさんはさっさと────い゛だい゛いいい!!!!」 親まりさは抗議の声をあげたが、犬に言葉が通じるわけもなく、頭の一部を噛み千切られていた。 噛み千切られ失った左半分の頭部からは餡子が漏れ出ている。 「ゆっ、おとうしゃん!?」 「おとうしゃんににゃにするのぉぉ!!」 「だめぇぇぇぇ!! にげてぇぇぇぇ!!」 親の仇だ、と犬に突進しようする子まりさ達を諌める親まりさの声に、この犬も人間同様敵わぬ相手と悟ったのか、すぐさま逃亡を図る子ゆっくり達。 親まりさも噛み付かれたが頭部は千切られていたため、すぐにその場を離れることができた。 だが、子れいむが一匹、逃げ遅れていた。 犬から一番遠い位置に居て、犬に突っかかろうともせずに逃走の体勢に入っていた子れいむ。 本来ならば真っ先に逃げられていたであろうが、子まりさが子れいむを踏みつけていったため逃げ遅れていたのだ。 「ゆっ~、まっちぇぇ!」 背後からは犬が外敵を排除せんと追ってきている。逃げ遅れている自分。 恐らく子れいむは最初に死んだ自分の姉妹のことを思い出していたことだろう。 しかし、ここで子れいむを殺してしまっては私の計画が狂ってしまう。 私は子れいむを踏みつけていった子まりさに狙いを定めると、『腹話術』を使用した。 「ゆっ!? 〝ガメラが飛ぶ時の回転数すごすぎぃぃぃぃぃ!!!〟」 『腹話術』をかけられた相手はその間気を失う。 つまり、気を失った子まりさの足は止まるということだ。 足の止まった子まりさを追い抜いていく子れいむ。 理由は分からないだろうが助かったので特に気にすることはないだろう。 「…………ゆっ!? なんでれいむがまえにいりゅ────ゆ゛ーーーーー!!!!!」 子まりさが気が付いた次の瞬間には、子まりさは犬に咥えられていた。 「いだいよ゛ぉぉぉぉ!!! おどうじゃんだずげでよ゛ぉぉぉ!!」 噛まれ、宙に浮く子まりさは泣き叫び親に助けを乞う。 しかし親まりさは無力である。ゆっくりが自分より体の大きいものに敵うはずもない。 「ゆっ、ゆっ……!」 犬は鎖に繋がれているため鎖の長さ以上の距離を逃げている親まりさ達は襲われることはない。 だが犬の行動範囲内に飛び込もうものなら今度こそ問答無用に殺されてしまうだろう。 子まりさを助けることは最早不可能だった。 「ゆ゛っ、ごべんね、ごべんねぇぇぇぇ!!」 親まりさは涙を流しながら子まりさを見捨てた。 残った子まりさと子れいむを連れて全速力でその場を逃げ出したのだ。 「ゆっ、おとうしゃん、まりさのいもうちょがぁぁぁぁ!!!」 「だめだよぉぉぉ!! みんなしんじゃうよぉぉぉ!!」 親まりさに咥えられた子まりさは犬に咥えられた子まりさを助けるよう求めるが、それは叶わぬ願い。 子れいむも子まりさを助けようとしたのかいくらか逡巡していたが、やがてどうやっても助けられぬと分かったのか去り行く父親達の後を追っていった。 「どぼぢでぇぇぇぇ!!! なんでまりしゃを……ゆがべぺ……ゆ゛っ!!」 助けられなかった子まりさは、身の程を弁えぬ所業と身内を蹴落とすという外道な行いの報いを受ける。 子まりさは少しずつ咀嚼されるという苦しみの中息絶えていった。 その死に顔は私の胸がすっ、とするほどの絶望と苦しみに彩られていた。 「…………くふっ」 思わず笑いが漏れる。 遂に半分にまで数の減ったゆっくりの一家はその歩を人里の中心に向けていた。 だが当人達は気づいてないだろう。ただ襲い来る脅威から逃げていただけにすぎない。 やつらは気づいていない。自分達から危険に近づいていることに。 「……ゆっ? おとうしゃん、いいにおいがするよっ!」 それまで俯いてしょこしょこと小さく跳ねていた子まりさがその場で嬉しさを表現するように跳びはねた。 言われ親まりさと子れいむもその場で立ち止まり鼻(?)をひくひくさせて臭いを嗅ぎ取ろうとする。 「ゆっ、ほんちょだ! おいちしょうなにおいがしゅるよ、おとうしゃん!」 「ゆゆっ、ほんとうだね! こっちからするよ! ゆっくりできるよ!」 それまで沈んでいた家族の間に笑顔が戻ってきた。 ゆっくり一家はその笑顔のまま臭いのする方へとぴょこぴょこと進んでいった。 だがゆっくり一家がその先で「しあわせ~」になることはないだろう。 ゆっくり達の向かった先、「いいにおい」の出所は、焼き鳥屋だった。 私もよく行く馴染みの店だ。 夜になると人間や妖怪達が一緒に酒を飲み騒いでいる。 今日も店の中からは様々な笑い声や上手そうな焼き鳥の匂いが漏れ出ている。 中の者だけではなく近くを通りかかった外の者まで陽気にさせる、私の好きないつもの雰囲気だった。 「ゆっ、ここからおいしそうなにおいがするよ」 「ゆっ♪ ゆっ♪ これでゆっくりできるね~♪」 パンドラの箱に残った希望を見つけた人間のような表情をしながら焼き鳥屋の方へと跳ねていくゆっくり一家。 焼き鳥屋の入り口は引き戸なのでゆっくりには開けられないかと思ったが、誰かが閉め忘れたのか若干開いており、そこに親まりさが自分の頬を突っ込んでむりやり戸をこじ開け入っていった。 私は店に入るか入るまいか若干迷ったが結局入ることにした。 「ゆ~♪ おいちちょ~♪」 中に入ると子ゆっくりが歓喜の声をあげていた。 店の者達は入ってきたゆっくりを気にもとめず(というか気づいていない)皆好き勝手に飲み騒いでいた。 まだ日が沈んでから一刻も経っていないというのに気の早い連中だ。 ぴょこぴょこと跳ねながらゆっくり一家はカウンター席の方へと向かっている。 私もゆっくりの後に続いてカウンター席へと向かう。 普通に歩いてはゆっくりを追い抜いてしまうから牛歩戦術だ。 ゆっくり一家はカウンター席の下まで辿り着くと、親まりさが空いている席の椅子へとジャンプした。 そして椅子からカウンターへと再びジャンプ。カウンターの上に乗った親まりさはカウンターの向こう側で焼き鳥を焼いている店主(私達は敬意と親しみを込めて〝マスター〟と呼んでいる)に向かってこう要求した。 「ゆ~、おじさん! まりさたちにもごはんちょうだいね!」 どうやらマスターが客に注文された酒や焼き鳥を渡すのを見て、マスターが食べ物をくれる人だと勘違いしたようだ。 「おぉう? なんだ、ゆっくりじゃねぇか」 親まりさにマスターよりも先にすぐ隣の席で酒を飲んでいた客が気づいた。 って、誰かと思えば飲み癖と悪食とロリコン趣味で有名なタケさんじゃないか。 流石に稗田家の当主はやめておいた方がいい、と今日こそ言うべきか? 「なんだ? 誰がゆっくり入れたのは」 タケさんが親戚のわんぱく坊主でも見るかのような反応を示したのに対し、マスターは明らかに不機嫌そうだった。無理もないか。 「いや、店の戸が半開きだったんですよ」 タケさんの隣の席に座り、誰かに濡れ衣が着せられる前に私がフォローに入った。 「おぉう、なんだ、お前がゆっくりを連れてきたのか? ……ゥィック」 「違いますよ」 やんわりと否定しておく。どっちかっていうとゆっくりが私を連れてきたようなものだ。 というかタケさんもう酔ってるんかい。 「ゆっ! ゆっくりむししないでね! さっさとまりさとまりさのこどもたちのためにごはんをよういしてね!」 見ると親まりさがその体を膨らませて怒っていることをアピールしていた。 それを見てタケさんがゲラゲラと笑い、マスターが更に不機嫌そうな顔になり、私の虐待エナジーが高まる。 「ちょうだちょうだ! さっさとまりしゃたちにごはんをよういしてね!」 カウンター席の下、タケさんの足元で子まりさも親に続き抗議の声をあげる。 タケさんがその声で子ゆっくりが居ることに気づき視線を下に向け 「おぉう、ちみっこもいるのか~」 と陽気に笑った。 …………決めた。 親まりさ、貴様を潰すのは後だ。 ここでは子まりさを潰す。 私は『腹話術』を、今度はゆっくりではなく、タケさんに向けて発動させた。 「〝おぉう、マスター! ちょいとこの子ゆっくり焼いてくれや!〟」 「「ゆっ!?」」 親まりさと子まりさが跳ね上がる。 私は『腹話術』をかけられ自分が注文したことを知らないタケさんに代わり、床にいる子ゆっくりを拾い上げた。 「ゆっ!? まりしゃをどうちゅるの! ゆっくりはなちてね!」 「はなちぇ~!!」 掴まれた子まりさがジタジタと身をよじり、側にいた子れいむがピタンと体当たりをしかけるが効果は無し。 なんの障害もなく子まりさは私からマスターへと手渡された。 「まったく、タケさんの悪食っぷりは相変わらずだねぇ」 マスターはそうぼやくだけで特に疑問ももたず子まりさの調理にかかった。マスターも馴れたものだ。 「まりさのごどもがえせぇぇぇぇぇ!!!」と私が子まりさを掴んだあたりから親まりさが騒いでいたが、タケさんが面白がって押さえつけていたので何もできていない。 マスターは子まりさを軽く水あらいして「ゆぐがぼべっ!!」、さっと振って水気を飛ばすと「ゆゆゆっ!?」、焼き鳥を焼く金網の上に子まりさを乗せた。 「あ゛ぁぁぁつ゛つづっっいいいぃいぃよおおぉぉ!!!」 ボロボロと涙を流す金網の上の子まりさ。零れ落ちた涙はすぐにジュッと蒸発する。 なんとか金網の上から逃れようとするもマスターが上から菜箸で押さえつけているため動けない。 「ゆぎゃ"ぁ"ぁぁ"!!!ま゛り゛ざのごどもがぁぁぁ!!いぎゃ"ぁ"ぁ"!! タケさんに押さえつけられている親まりさがカウンターで泣き叫ぶ。 ガハハハハハと笑いながらタケさんに押さえつけられている無力な親まりさは素晴らしい程に滑稽だった。 「ぶわっはっはっはっは」 とついつい私も笑ってしまう。 私のことを知らない他人が見ればどこの大根役者だと思うことだろうが。 「おどうじゃん、だずげでよぉぉぉ!!! いぎゃ"ぁ"ぁ"!! まりじゃのあぢがぁぁぁぁ!!」 金網の上で泣き喚く子まりさを、マスターは無慈悲に菜箸で転がす。 今度は顔面が金網のつく形になった。 「ゆ゙ーーっ゙!!! も゛う゛や゛め゛でえ゛えええ!!」 ハッキリ言って煩いが顔面を焼かれているためすぐに大人しくなるだろう。 もう一つのうるさい親まりさはと言うと 「グワッハッハッハ、なんだお前、頭ないじゃんぶわっはっはっは」 と欠けた頭部からタケさんに箸を突っ込まれ頭の中の餡子をグチャグチャにされていた。 「ゆ゛! ゆ゛! ゆ゛! ゆ゛…!」 なんだか白目を向いて痙攣していた。はっきり言って気持ち悪い。キモイじゃなくて気持ち悪い。 「へい、焼きゆっくり一丁!」 やがて子まりさが焼き上がり小皿に乗せられタケさんの前に置かれた。 「ま"り"ざのごどもがぢんじゃっだぁ"ぁ"ぁ"!!どぼじでごんなごとずるのぉ"ぉ"!!」 「あれ? 俺焼きゆっくりなんて頼んだっけ?」 「なんだい酔っ払いすぎだよタケさん」 「そうだよタケさん、酔いすぎだよ」 焼きゆっくりの注文は私が『腹話術』で頼んだためタケさんは覚えているはずがないのだが、マスターの言葉尻に乗って酔ったせいにしておく。 「んあ~、そう言われれば頼んだ気も…………でもいらねぇや」 タケさんはそう言って子まりさを掴むと床に叩きつけて草履の踵部分でグリグリとすり潰した。 その光景を子れいむは間近で見ることになったことに、私は気づいていた。 「あぁ、もう。やめてくれやタケさん、掃除するの俺なんだから」 「おっと、わりぃなマスター。代わりにもう一杯くれや」 「何が代わりなんだか」 「ゆぐ……ぐずっ……なんでごんなごどするのぉ……まりざのごどもがぁ……」 「なんだ、まだいたのかこのゆっくり」 「あ、私が外に出しておきますよ」 マスターの不機嫌が本気でヤバい段階にいきそうだったのでマスターに潰される前に私は親まりさを抱えて外に向かっていく。 もちろん子れいむも忘れずに足で外へと蹴飛ばしながらだ。 「飲みにきたんじゃないのか?」 「焼き鳥を家で食おうかな、と思っただけです。後でまたとりにきますから焼いといてください」 「あいよ」 成り行きで今晩の飯が決まった。 だが飯の前に、最後の仕上げだ。 ふっふっふっ、最後は私自ら手を下そうぞ。 どこのラスボスだよ。 私は親まりさを抱え子れいむを蹴りながら焼き鳥屋と隣の酒屋の間の狭い路地に入った。 その間親まりさを子れいむも子供のようにボロボロと涙を流し続けていた。 「さて、と」 子れいむを蹴飛ばすのをやめ、子れいむの脇に親まりさを置いた。 ゆっくりと視線を合わせようと、その場にしゃがみこむ。それでも私の方が視線が上だが。 「おいゆっくり。なんでこんなことになっているかわかるか?」 「ゆっ、ゆぐっ……まりざのごどもがぁぁぁ……」 「質問に答えろよクズ饅頭」 親まりさの口に拳を突っ込む。喉までだ。 そして体の奥底の餡子を一握り掴むと勢いよく引っ張り出した。 「ゆべぇぇぇぇぇ!!!」 叫び、咽る親まりさ。 その顔に親まりさの体から抜き出した餡子を叩き付け、もう一度問う。 「なんで、こんな、ことに、なって、いるか、わかるか?」 脳の足りないゆっくりにも分かりやすいように一語一語区切りながら。 それで流石に理解したのか親まりさは泣きながら答えた。 「ゆぶっ、にんげんだぢがまりざだぢのじゃまずるがらだよぉぉぉ!!」 「残念、不正解だ」 罰として今度は親まりさの歯を引っこ抜いてやる。 もちろん道具など使わない。素手だ。 左手で上顎を掴み、右手で前歯の一本(歯は飴だった)を情け容赦なく引っこ抜いてやった。 「ゆぼぉぉぉ!?」 「ゆゆっ、おとうしゃん!!」 それまで親まりさの後ろでガタガタ震えていただけの子れいむも恐怖を忘れて親まりさを心配する。 だが子れいむ。貴様は今は後回しだ。 「正解を教えてやるよ」 私はそう囁きかけながら引っこ抜いた歯を親まりさの右目にぐりぐりとおしつけてやる。 「ゆがっ、べぽ……ぜいがいっでな゛に゛ぃぃぃぃぃ!!!」 「お前らが身の程も弁えず人間の里に来たこと。それと家族を見捨てたことだ」 親まりさはその言葉でカッと目を見開く。何故知っているのかという顔だ。 だが今はそこを言及する場合ではないと分かっているのか、口にしたのは弁解だった。 「ゆっ、だっで、だっで、ごはんがもうないんだよっ! にんげんのごはんをもらわないといぎでいげないんだよっ!」 「それはお前等の怠慢だ」 罰として頬をちぎってやる。 「ゆ゙ーーっ゙!!! …………ぞ、ぞれに、みずでだわげじゃないんだよっ! あぁじないど、みんなゆっぐりでぎないがら、じがだがなかったんだよっ!」 「ほぉ、つまりお前は多数を助けるために少数を尊い犠牲としたと?」 「ゆ゛っ! そうだよ! まりさはかぞくをたすけるためにしかたなく────!」 私は親まりさの行動を思い返す。 確かに、親れいむほど悲しみに打ち震えていなかったが、子まりさほど死んだ者を罵倒してもいなかった。 子れいむの足を引っ張って死なせたのも子まりさだ。親まりさじゃない。 親のほうのまりさは、割といい親だったのかもしれない。 こいつの言い分を鵜呑みにするならば、必要以上に悲しみに暮れなかったのも、一家の大黒柱の責任故だったのかもしれない。 でもそんなの関係ねえ。 「でもな、まりさ?」 「ゆっ?」 「そのまりさが助けたようとした家族、子れいむ以外みーんな死んじゃってるけど?」 「ゆっ!? ゆゆゆゆっ……!」 私の言葉にガタガタを震える親まりさ。 気づいたのだ。多数を助けるために少数を犠牲と成すやり方で、助かったのは少数なのだと。 「で、でもっ! れいむはいぎで────」 「こんなクズな親のもとにいたられいむゆっくりできないから、この子は私がもらっていくね?」 「「ゆっ!?」」 それまで黙っていた子れいむまで驚愕する。 そんなゆっくりには構わず私は子れいむを掴むと着ていた服の懐に入れた。 くぐもった「ゆ゛っーーー!!」とした声がわずかに聞こえてくるが無視しておく。 「ゆ゛ぅぅぅぅ!! ゆっぐりやめてね!!! まりざのごどもがえじでね!!」 子供を取り返そうと飛び掛ってくる親まりさの顔面を掴んでやると私は立ち上がり、そのまま表まで歩いていった。 手の中で「ゆがぁぁぁぁ!! はなぜぇぇぇぇ!!」と親まりさが喚いている。 吐息が気持ち悪かった。 私は人里の中を親まりさを掴んだまましばらく歩く。 道行く人、妖怪が親まりさの叫びに気づいてこちらを見やるが、私がゆっくりを掴んで歩いているのを見ると「なんだ、ただの虐待お兄さんか」と視線を外した。 そして私は人里の中で、二つの通りが交差する場所まで来ると、親まりさを地面へと落とした。 「ゆべっ!?」 ずでん、と転がる親まりさを一回蹴った後、私は懐からさっきの子れいむを取り出した。 「ゆっ! れいみゅをかえちてくれりゅの?」 無視。 「さてまりさ。選ばせてやる」 「ゆっ、ゆっ、まりざのごどもをがえ────」 「黙れクズ饅頭。喋っているのは私だ」 まともに会話できそうにないので口元を踏みつけて黙らせた。 しばらく「ゆ゛ーーー!! ゆ゛ーーー!!」と身を捩じらせていたが私が足をどけないと分かると少し静かになった。 「さて、お前に選ばせてやる」 そういいながら手の中の子れいむを眼前に突き出してやる。 子れいむも煩いので指を口に突っ込ませて黙らせている。 「お前があくまでこいつを返して欲しい、と私に戦いを挑むのであれば、こいつは死ぬ」 「「────っ!?」」 ゆっくりの目が見開かれる。 「だが、お前がこいつの命を助けて欲しいと願うのであれば、私はこいつをゆっくりさせてやるし、お前も逃がしてやろう」 私はそこで足をどけてやる。 「ゆっ! おじさんほんと!?」 「おにいさんだクズ饅頭」 口に蹴りをぶち込み歯を二、三本折ってやる。 「あぎゃぁッああ!! …………ゆ゛っ、おにいさん、ほんどう? そのごゆっぐりざぜでぐれる?」 「ああ、もちろんだとも」 「このまままりざががえれば、そのごゆっぐりでぎるの?」 「その通りだ」 このやり取りの間、子れいむはずっと声も出せず泣いていた。 目の前で親が見るも無惨にやられている。 悔しいのか、悲しいのか。 私にとってはどちらでもどうでもいい。 ただ指にたれてきた涙の生暖かさが、こいつは〝私流〟にゆっくりさせてやろうと決意させただけだ。 私は親まりさの頭をつかむと後ろを向かせてやった。 「道が二つある。どちらでも好きな方へ行って帰れ」 そう言ってやると、親まりさはしばらくその場で悩んだ。 だが、答えはもう決まっているだろう。 「ゆ゛っ、わがっだよ。まりざはおうぢがえるよ。だから、まりざのごどもゆっぐりざぜてね?」 「ああ、約束だ」 「じゃあね…………バイバイ……」 そう呟く親まりさの語尾は尻すぼみに消えていった。 やがてとぼとぼと左右のうちの右の道から里の外へと向かっていく親まりさ。 私は子れいむの口を塞いでいる指を抜いてやった。 「ゆぐっ……! おとうしゃぁぁぁぁぁん!!」 親を呼ぶ子の声。 今生の分かれとなる親子の、最後の会話。 親まりさは子れいむの声に振り返ると、くしゃり、とその顔を涙で崩すと、精一杯の声で叫んだ。 「ゆっくりしていってね!!!」 それで最後。 親まりさは子れいむの反応も見ずに全力で駆け出した。我が家へと。 親まりさの選択は正しかった。 命あってのものだねだ。 最後は二匹になってしまったが、全滅はしていない。 あの親まりさも私が見逃してやったことによって、やがてまた新しい所帯を持つことだろう。 この悲劇を教訓に、次こそゆっくりとした生涯を送るであろう。 次こそ、そう次こそ────。 「見逃してあげても、よかったんだけどねぇ」 君が悪いんだよ、まりさ。 私は選ばせてやった。〝どちらの道で帰るか〟を。 なのに君はそっちを選んだ。 あぁあ、なんてこったいまりさ。 君が逆の道を選んでいれば、幸せになれたかもしれないのに。 君が、いけないんだよ。 君がそっちの道を選ぶから 「君は、彼女へのプレゼントだ」 親まりさが選んだ道。 そこにはある伝統の家系の家がある。 幻想郷を見続けてきた、幻想郷縁起を編纂してきた名家。 稗田家が、ある。 全力で駆けるまりさが、稗田家の前に来た瞬間、私はまりさに『腹話術』をかけた。 「〝あっきゅうちゃ~~~ん。あっそびましょ~~~う〟」 おわり 子ゆっくりの運命は…… ───────── あとがきのようなもの コミックス版「魔王」最新刊五巻を読み終わった勢いで書いてしまいました。 そのため文体が安定していないかもしれません、申し訳ありません。 他に書いたもの:ゆっくり合戦、ゆッカー、ゆっくり求聞史紀、ゆっくり腹話術(前) このSSに感想を付ける
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昼。 仕事を終えて家に帰る。 鍵を開けようとしたところ、もう開いていた。 泥棒かと思って中に入れば、ゆっくりがいた。 「ゆっ! おにーさん! ここはまりさたちがみつけたおうちだよ! ゆっくりでていってね!」 「「「でていってね!」」」 数えて四匹のゆっくりまりさがそこにいた。 何をしているかと思えば、食料庫に置いておいた食べ物を全部食われている。 ご丁寧に貴重な胡椒や塩もだ。 しかし、俺はこいつ等を無視して台所へ向かう。 台所も荒らされており、鍋やらヤカンやらが散乱していた。 俺はそれをかき分けて椅子に座る。 そこで近所の子から貰った昼飯の握り飯を頬張った。 「ゆ! なにしてるのおにーさん! はやくでていってね!」 台所にいる俺を見つけて親まりさがぷくっと膨れて怒る。 子供たちも真似するように小さく膨らんだ。 「別にお前達の邪魔をしてないからいいだろう、ここはお前達の家なんだから俺は家具だとでも思えばいいさ」 俺はそう言って飯を食らう。 まりさ達はそれが気に食わない様子だった。 「いいかげんにしてよ! ばかなの? おにーさん!?」 「ばかなの?」 「しぬの?」 非難を浴びるが、俺は冷静に返す。 「ああ、馬鹿だよ」 その言葉に、俺が自分達より格下だと判断したらしくまりさは調子に乗る。 「さすがばかだね! ここがだれのいえかわからないなんて! いきてるかちないんじゃないの!?」 普通、並みの精神の人間だったらここでどうしていただろうか。 間違いなく引きちぎって殺していたに違いない。 「そうかもな」 「ゆふん! ばかなおにーさんはここでのたれじんでね!」 俺をせせら笑ってまりさ達は自分達がいた部屋へ向かった。 飯を食い終えた俺は、取り合えず眠りにつく事にした。 夜。 目が覚めるとゆっくり達がぷるぷると震えていた。 饅頭らしくおしくら饅頭をして暖を取っているようだ。 春になったばかりの夜はとてつもなく寒い。 「ゆうぅ……ここでさむさをしのごうね!」 「あったかいよおかーさん!」 「だいじょうぶだよ!」 「ぬくぬくだよ!」 まりさ達はみんな親を心配させないように言う。 家族愛って奴だろうか。 俺は台所にしまってある毛布を使い、それを服の中に仕込んだ。 そのまま掛けて寝れば、ゆっくり達に奪われるかもしれない。 多少動きづらかったが、晩御飯の準備をした。 今日は鹿のスープだ。 言い忘れていたが俺の職業は狩人で、山の近くで暮らしている。 そんな事はともかく、作業に移る。 調味料は食われていたため、お湯の中に山菜と鹿の茹でた肉が入ったような質素なものとなった。 しかし、それでもうまそうな匂いがするらしく、まりさ達が俺の元へやってくる。 「ばかなおにーさん! それをまりさによこしてね!」 無視。 するともう一度まりさが叫ぶ。 「おにーさん! それをまりさによ・こ・し・て・ね!」 よこせを強調するが、無視。 俺は体当たりされてスープを零されてはたまらないので、一気に飲み干す。 「どうしてくれないの!? なんで? いいかげんしんでよ!」 「俺はお前の家の一部で家具だ、家具はお前のためにご飯を作らないしあげもしない。それにお前はゆっくりだろ、自分で狩りくらいできるだろ」 その言葉にぐっと歯を食いしばるまりさ。 確かにその通りである。 まりさはゆっくりの中では知能があるほうで、狩りは得意なはずだ。 「おかーさん、おなかすいたよ……」 さむそうにしていた子まりさの一匹が親に言う。 親は憎しみの表情を浮かべて俺を睨んだ。 だが、無視。 「まぬけなおにーさんがごはんをくれなくてごめんね! あしたたくさんごはんをとってきてあげるからね!」 子供達は不服そうだったが、やがて親に従った。 (あの様子だと食料庫の中身全部なくなってるわけか) 俺はそう考える。 まりさ達的にはもう春が来ているようで、ご飯を溜め込むなんて事はしなくなる。 食べられるだけ食べる、というのがゆっくりの習性だ。 俺は早めに家を出る事にした。 朝。 俺が目を覚まし居間へ行くと、寒さに震えながらもすやすやと眠っているまりさ達がいた。 起こさないように猟銃を持ってすべての部屋の鍵を閉める。 そして俺は狩りへ向かった。 お昼ほどになって、俺は狩りをやめる。 そして、食料を調達するために里へ向かった。 里は相変わらずにぎやかだった。 そこで俺はあるお店を見つける。 店の名前はゆっくり屋という名前だった。 中に入ってみると、ゆっくりれみりゃがお迎えをする。 「ごんでぢわ! おぎゃぐざまはなんべーざまでづが!?」 鼻にかかる声で人数を聞かれたので俺は一人だと答える。 すると、ゆっくりれみりゃが少しほっとしたような顔をした。 「あ、いらっしゃいませ! こちらへどうぞ!」 後から店員がやってきて、俺を席へ案内する。 メニューを渡されて、俺は目を通してみた。 ゆっくりれみりゃの腕のハンバーグ。 子れみりゃの肉まん。 奇形子れみりゃの踊り食い。 ゆっくりれみりゃの足の丸焼き。 等と書かれていた。 俺はとりあえずハンバーグと肉まんを頼んでみる事にした。 数分経ってから、店員とれみりゃが俺の前にやってくる。 しかし、料理はなかった。 「いまからお客様の前でれみりゃの調理をします、ごゆっくりとお楽しみください。ほら、やれ」 店員が言うと、泣きべそをかいているれみりゃが自分の腕を台の上に置いた。 そして、あろうことが自分の腕を引きちぎったではないか。 「う゛ぐぎぎぎぎぎぎぎ!! い゛だい゛ー! ざぐやー! ざぐぐぇっ!?」 泣き叫ぼうとしたところ、店員に殴られるれみりゃ。 さらに指示されると、自分のもう片方の腕で腕を叩き潰した。 いい感じに余計な肉汁がこぼれる。 店員は満足そうな顔をしてそれを焼いた。 「はい、お待ちどうさまです」 「どうも」 俺はそれをいただく。 餃子の中身を食っているような味がした。 たしかにハンバーグといえばハンバーグだが。 次に用意されたのは踊ってやってきたれみりゃだった。 その上にはぱたぱたと子れみりゃがいる。 「う~☆ れみりゃのこどぼがわいいでそ~?」 俺がああ、と答えると腰に手を当てて尻を振る。 ダンスのつもりなのだろうか。 はたから見れば挑発してるようにしか見えない。 「いまですお客様、尻をはがしてください」 店員が言うので、俺はとっさにれみりゃのスカートを引っ張り、尻を丸出しにする。 別に子供と変わりないような尻だった。 かといって欲情したりしないが。 「う゛~なにするどぉー! れみりゃのぷりでーなおしりっがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 行ってる途中で悲鳴を上げる。 なにせ店員がナイフで尻の皮を切っているからだ。 一定の大きさに切り終えると、今度は親の前で子を叩き潰す。 「う゛ぎゅ!?」 「ぶぎゃっ」 間抜けな悲鳴がしたあと、台の上に肉の塊があった。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! れ゛み゛り゛ゃのあがぢゃん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!」 それを無視して切り取った尻の皮に先程の子れみりゃの残骸をつめ、蒸篭に入れた。 しばらくたって、ほかほかと湯気が立ち上る蒸篭を開けるとなんと肉まんが完成しているではないか。 とても不思議だ。 そして何より吃驚したのがこれだ。 「ぅー ぅー」 小さな声だが、小刻みに震えながら声を出す肉まん。 かろうじて生きていた子れみりゃが再生し始めていたので、こんな風になるらしい。 よくかんで食べれば腹の中で再生することはないらしい。 俺はそれを美味しくいただき、勘定を払って店を出た。 また夜。 返ってくると瀕死のまりさがいた。 やせ細っていて、今にも死にそうである。 一日半食べなければ餓死するのか。 「おに、さん……ごは、ん、ちょうだ、いね……」 弱弱しい声を出すが、俺は無視する。 「このまま、じゃ、まりさたち……しんじゃう、よ……?」 「だから?」 俺は買ってきた物で料理を作る。 匂いに釣られて子供達もやってきた。 「それ、ちょ……だい」 「……」 俺は無視して飯を食う。 まりさたちは血眼になってそれを見ていた。 「お前達は自分で狩りができるんだろ? なら必要ないじゃないか、あと食料庫から食べればいいだろう」 鍵を閉めたのは俺だなんて眠っていたこいつらには分からない。 ただ、部屋から出られず、ただ衰弱していった。 「おかーさん……おなか、すいたよー……」 その言葉にまりさも限界が来たらしい。 歯を食いしばり、俺に飛び掛ってきた。 「えざよごぜえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 俺は銃を取り出し、飛び掛ってくるまりさの口に突っ込んだ。 「別にいいぞ、黒胡椒の飴を食わせてやってもいい」 黒胡椒の飴、つまり弾丸の事だ。 まぁ胡椒は発火に使うものだが。 「ゆぎぎぎ! よごぜ! よごぜぇ!」 喚くまりさを無視して、俺は飯を食い終える。 そして毛布を服に仕込んで寝た。 最初は、喚きたてるゆっくりがうるさかったが、段々と静かになる。 朝。 起きると、一家は死んでいた。 餓死と凍死だろう。 皆、死への恐怖に目を見開いている。 俺は、一匹を釘で指して壁に張り、ゆっくりが来ないようにする。 さすがに何度も来られては、こっちの身ももたない。 そして残った方は、今日の昼飯となった。 別に殺そうと思えば殺せる。 だが、こいつらのために体力を消耗したり、貴重な弾丸を無駄にしたくはなかった。 ゆっくりなど、所詮閉じ込めてしまえばいずれ死ぬ。 だから、余計な手は加えない。 俺はそう考えている。 居座ったゆっくりなど無視して生活すれば勝手に死ぬのだ。 俺は鹿を狙い打って、今日の晩御飯を手に入れた。 あとがき 皇国の守護者のパロディでもやろうかと思ったけど辞めた。 サーベルタイガーにでも食わせるかな? 新城ォォッ! このアフォが書いた作品 霊夢の怒らせ方 ゆっくりデッドライジング1~3? 霊夢のバイト 慧音先生とゆっくり ゆっくりCUBE 書いた猟師:神社バイト このSSに感想を付ける